BMW歴代のデザイナーたちが描いた貴重なスケッチ19枚

すべてはスケッチから始まる(Photography:Daniel Kraus)



BMW3シリーズ E36:1990〜99年
「3シリーズの話がいささか長くなりました。なぜなら、1800と2002、それに3シリーズの一部は、もっとも長い間にわたり、BMWデザインの何たるかを表現し続けてきたモデルだからです。90年代初頭に入ると、私もよく知っているデザイナーのピンキー・ライが登場します。香港出身のライは元フォードで、とても装飾的なデザインを得意としていました」。ライは、オーストリア人デザイナーでボスのボイク・ボイヤーとともに1990年にデビューしたE36(3シリーズ)をデザインした。

ファン・ホーイドンクは、当時まだデザインを学ぶ学生に過ぎなかったが、そのスタイリングに強い衝撃を受けたという。

「E36、3シリーズはBMWデザインに革命的変化を巻き起こしました。ここには実際の製品には採用されなかったたくさんのテーマが描かれています。おそらくBMWは大きな変化を望んでいたのでしょう。しかし、そのためにはしっかりとした道筋が必要です。そこで、まずは小さな一歩から踏み出すことにしたのです」

デザイン部門の拡張に伴い、BMWはモデリングに用いる素材をそれまでのクラスター(石膏)からクレイ(粘土)に切り替え、彫刻的なシェイプをいくつも生み出していった。

E36を手がけたのは様々な国から集まったデザイナーたちで、ファン・ホーイドンクは「とても情熱的な作業だった」と語る。スケッチ [13]の派手なデザインを手がけたのもピンキー・ライだ。「これはマーカーで紙の両面に描かれた作品で、一部に有機溶剤も使われています。当時はめずらしいことではありませんでしたが、いまでは法律で禁止されています」

ライがフォード出身である証拠は、初期のスケッチがメルクールXR4 Tiやスコーピオ、それに初代トーラスなどの影響を受けていることからも明らかである。彼が提案した、突き出たノーズやガラスカバーで覆われたヘッドライトなどは、完成に近づいたE36のスケッチにも描かれているものの、ファストバックのリアデザインだけは実現しなかった。ライのアイデアを実現可能な形に翻訳し直したのはボイク・ボイヤーで、そのボイヤーが描いた作品がスケッチ [14]である。また、カリフォルニアに本拠を置くBMWのデザインワークスもこれとよく似た作品を残しているが、こちらのほうが球面をより多用している(スケッチ [15])。






編集翻訳:大谷達也 Transcreation:Tatsuya OTANI Words:Richard Bremner Photography:Daniel Kraus

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