1960年代の陸と空の偉大なアイコン ジャガーEタイプVSシーキング

Photography: Lyndon Mcneil

1961年に登場したジャガーEタイプは、英国を代表する乗り物のアイコンだが、唯一の物ではない。もう一つ、王立海軍のシーキング・ヘリコプターを忘れてはならないからだ。この対決企画はブロードキャスターでありジャーナリストのジョン・サージャントの魅力的なドキュメンタリーがきっかけだった。この中で世界の各地で過去53年間任務についていた素晴らしいヘリコプターを彼が賞賛したのであった。

Eタイプはかつて世に出たクルマのなかでもとりわけ美しい、ブリティッシュデザインの素晴らしさのシンボルとして、多くが認めている。

シーキングはアメリカのシコルスキー社で設計された後、オリジナルのGE社製エンジンをロールス・ロイス社の"ノーム" ターボシャフトエンジンに換装し、英国のウエストランド社がライセンス生産を開始している。1969年に英国のロイヤルネイビー、RAF(ロイヤルエアフォース)に配備され、現在では哨戒、救難任務の機材として欠かせないものになっている。もしもこれら二つの、空と陸を代表する有名マシンが会したら、素晴らしいのではないだろうか。ひょっとしたら、レースすら可能なのではないか。私がロイヤルネイビーに最初にこのアイデアを提案したときは、あまりまじめには受け取られなかったようだったが。だが、説明を繰り返すうち彼らは、これは恰好の訓練になると思い始め、そこから先はとんとん拍子に話が進んだ。



8月末のある荒天下、コーンウォール・ヘルストンのカルドローズ艦隊航空隊基地で、私は最も初期の市販モデル、Eタイプシリーズ1フラットフロア、登録番号"1600RW" の長いボンネットを見下ろしていた。私が、この計画にちょっと不安を感じ始めたころ、私の横にはこのクルマのオーナーであり、今回のナビゲーターでもあるピーター・ニューマーク(ジャガースペシャリストのクラシックモーターカーズ社の会長)が並んでいた。

前方には250マイル(約400km)のチャレンジが待ち受けている。我々がゴールに定めたのは、1834年から続く伝統の夏のイベント、ザ・ポート・オブ・ダートマス・ロイヤル・レガッタだ。ロイヤル・レガッタはデヴォン州の夏の一大イベントで、空軍がエアディスプレイを行うほか、近隣のブリタニア海軍兵学校も大きく協力している。今回のレースライヴァル、771スコードロン(飛行隊)のシーキング"ズールーアルファ167(ZA167)" はオープニングイベントに参加するのだ。

今回は地図を使った古いやり方を選んだ。また前夜、ルートについて合意し、いくつかの基本原則を定めたが、それらのほとんどはシーキングに適用されるものだ。ヘリは直線を飛ばないこと、離陸に関する厳格な規定、ヘリが基本的に高速である事をふまえてのハンディキャップの設定、およびクルマの道路上でのスピードリミットなどだ。
 
スタート直前に緊急事態が発生した。ZA167の本来の任務である救難活動のスタンバイのため、ヘリのスタートはカルドローズ基地ではなく、コーンウォールのニューキーから発進するというのだ。チャレンジ第1レグのゴールは、ニューキーの6.9マイル南西にある第二次世界大戦でRAFの基地だったペランポースのエアフィールドとなった。

午前8時、ニューマーク会長は厄介なオリガミと格闘していた。相手は天地左右がたっぷり2フィート(60センチ)はある5万分の1地形図が5枚以上だ。そして我々はスタートラインを離れた。朝の清冽な空気の中、Eタイプのストレート6サウンドとともに、英国のカントリーサイド特有のナローロードを我々はペランポースへ急いだ。50分後にそこに到着したとき、シーキングの影は見えなかった。

ジャガーがまず一勝だ。次の瞬間、北西方向にパタパタと音が響きZA167が到着した。バックミラーにはなにも映らず、大きく迫り来るシーキングなどはまったく見えなかったのに。着陸後は点検を行い、次のレグに備える。第2レグのルートは、基本的には陸・空同一ルートなので今度は併走になる。ゴールはたった2.5マイル先。われわれにとっては5分、彼らにとっては2分の行程だ。ヘリは空中に跳び上がり、我々と並行にエアフィールドを横断した。




道端を剪定している巨大なトラックを追い越して、我々は、以前陸軍の訓練基地であったコーンウォールのペンヘイル基地に到着した。ヘリは前方に見え、我々は遅れに苛立ったが、ハンディキャップのおかげで結局はリードしていた。

第3レグの到着地はデヴォン州ヨーヴァートンのハロービアにあるもう一つの以前のRAF基地だ。我々はスタートした途端に休日の渋滞
に捕まった。ルートはコーンウォール地方の最も魅力的なパートを通過してデヴォンに入るが、しかしそれらを眺めている余裕はない。タヴィストック近郊を通過。我々がタマール川をわたる際、前方にシーキングが見えたが、追いつけるほどゆっくりではなかった。我々はハロービアに到着し、ヘリも着陸した。ヘリチームはポイントを奪還しここまでのスコアは2 :1。ジャガーチームの好意で、双方最終レグのために地図を見比べ、確認する。ヘリとEタイプは休日の観光客に囲まれ、そのうち二人がたずねてきた。

「このヘリが迷子になったんで、あんた方が地図を分けて道を教えてやっているのかい?」と。

最終レグでは同時にハロービアをスタートしたが、すぐにヘリは彼方の点になった。今回のタイムハンディキャップシステムではEタイプの1時間7分走行は、ヘリの飛行時間12分に相当する。これはクルマとヘリの速度差をできるだけ公平にするためのものだが、しかし我々がZA167に勝てるチャンスは、トトネスとダートマスの中間で曲がりくねった脇道を見つけたあたりで絶望的となった。 

私が当初計画したプランの心配は、まさに現実のものとなった。事前に予想すべきだったかもしれないが、このダートマス・ロイヤル・レガッタの前夜には、そのチャーミングなデヴォンの町に入る道路はどれも規制が掛かっていた。単に勝負に負けたというだけではなく、我々がブリタニア海軍兵学校に到着した時間には、空・海の救助訓練が地元のライフボートも交えて既に行われていたのだ。結局、Eタイプは4つのレグ中で2レグに勝利し、そしてシーキングも同様。我々はAZ167のクルーと握手し、引き分けとすることにしたが、この勝負はいずれ近いうちにやり直しが必要だろうと、別れ際に申し入れることは忘れなかった。

1961ジャガーEタイプ3.8ロードスター
エンジン:3781cc 直列6気筒 DOHC
最大出力:265bhp/5500rpm 重量:1206kg
最高速度:149mph(約240km/h)

1969 ウエストランドWS-61シーキング
エンジン:ロールス・ロイス・ノーム(H1400-2)
ターボシャフト×2基 最大出力:1660bhp×2基
重量:6387kg(燃料なし)
最高速度:129mph(約208km/h)

編集翻訳:小石原 耕作 Transcreation: Kosaku KOISHIHARA Words: David Barzilay

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