コンクール常勝の「タルボ・ラーゴT150C」オーナーに学ぶ「美しい車」の本当の価値

1937年 タルボ・ラーゴ T150C SS フィゴニ・エ・ファラシ(Studio Photography:Michael Furman)

このタルボ・ラーゴT150C SSは、コンクール・デレガンスの常連であり、2015年世界最高峰のコンクールのひとつと評されるコンクールでも栄誉を勝ち取った。オーナーのピーター・ミューリンにその魅力を聞いた。

ベブルビーチ・コンクール・デレガンスで「ベスト・オブ・ショー」の栄冠を手にすることは、クラシックカー・オーナーにとって最高の栄誉に違いない。また、クラス優勝は、最高ランクの車であると保証されたことを意味する。

2016年、ペニンシュラ・クラシックス「ベスト・オブ・ザ・ベスト」アワードがクラシックカー・オーナーにとって新たな目標になった。ペブルビーチだけでなく、世界中の大きなコンクールで出展されるすべての車の最高位に贈られる賞だ。24人の国際的に有名な審査員によって審査が行われた結果、2015年シーズンを対象としたその初タイトルは、ピーター・ミューリンの1937年タルボ・ラーゴT150C SSフィゴニ・エ・ファラシが手にした。

ミューリンのタルボ・ラーゴはコンクールで多くの実績を上げている。1980年代の中頃からペブルビーチでの5回ものクラス優勝に加え、その他のコンクールでも多数の賞を獲得している。そして2015年にはグッドウッド・フェスティバル・オブ・スピードのカルティエ・スタイル・エ・ラクス・コンクールで大賞を受賞した。これにより2015年の「ベスト・オブ・ザ・ベスト」賞へとノミネートされ、ついに頂点へと登りつめたのである。

ミューリン自動車博物館
大きな賞をいくつも手にしている車なのだから、今さら驚くこともないと思うかもしれない。しかしミューリンのタルボ・ラーゴに刻まれた興味深い事実は、飾りものにしているのではなく、ピーターはヨーロッパで開催されたルイ・ヴィトン主催の1000マイルラリーにもこのティアドロップ・クーペを出走させている。その理由はいたってシンプルだ。彼は友人の家でゆっくりとお茶を楽しみながら、「私が気に入っている車だし、運転していて楽しいから」と語った。

ピーターとマールの夫妻は世界で最も貴重なアールデコカー・コレクションを所有している。カリフォルニア州オックスナードにあるミューリン自動車博物館は、ブガッティ、ドラージュ、ドラエ、ヴォワザンなど、究極の"スーパー"なカーコレクションを展示するアールデコに対するオマージュである。彼がタルボ・ラーゴを好きだと言うことは、この車がいかに素晴らしいかを物語っていると言えよう。

「この車をコレクションに加えることができたのは、私はこの車に恋をしてからずっと後のことです。デザイナーのブルックス・スティーヴンスが1台所有していたのを見て、今までに出会った中でも最も優美な車だと思いました。そして1984〜1985年、1台が売りに出されるかもしれないと聞き、やっとの思いで手に入れることができました。以来、ずっとこの車が大好きです」

こう語るピーターのアールデコに対する想いは、車だけにとどまらない。

アールデコ期の逸品、ティアドロップ
「車は私たちの博物館のメインですが、絵画、家具、グラフィックス、彫刻なども収集しています。この情熱がどこから来るのかわかりませんが、学生時代にアートを専攻したときから始まり、常にラインやカーブ、形状に興味を持っていました。私は機能的なモノを美しく変えるアールデコの手法が好きだったのです。台所にあるトースターだって、格好が良いに越したことはないですからね。私はUCLAでアートを勉強していましたが、あまりに成績が悪くて途中から経済学を専攻することにしたのです」

編集翻訳:伊東 和彦(Mobi-curators Labo.) Transcreation:Kazuhiko ITO(Mobi-curators Labo.) 原文翻訳:渡辺千香子(CK Transcreations Ltd.) Translation:Chikako WATANABE(CK Transcreations Ltd.) Words:Mark Dixon Studio Photography:Michael Furman

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