モータースポーツを芸術として写した人物が当時を振り返る

octane UK



ブリッグス・カニンガムとカニンガムCR-4。1954年ル・マンにて


私が初めてル・マンに行ったときに撮った写真だ。ピットでブリッグスの写真が撮れるだけでワクワクしたね。大富豪でありスポーツマンでもある彼はアメリカのヒーローだったからね。車の向こう側の路肩を見てほしい。集めた小枝を編み込んだようなものが観客との仕切りに使われているが、これでは衝撃など吸収しきれないよ。次の年にメルセデスが観衆の中に突っ込んで大惨事になった背景にはこんなプアな設備も原因のひとつだったんだと思う。1954年は私はカニンガム・チームといっしょに行動したからわかったことなんだけれど、カニンガムは本当にいい人で、他人のために彼が手助けできることは何でもしてあげていたよ。


スターリング・モスとデニス・ジェンキンソン組のメルセデス・ベンツ300SLR。1955年のミッレミリアにて


ラティコサ峠のてっぺんで撮ったジェンクス(訳註:デニス・ジェンキンソンの愛称)とモスの写真だ。参加者はフローレンスから上ってきてほとんど全開で走る。この紙焼きにモスはサインをしてこう書き加えてくれた。「ジェシーへ。この写真はロードレーシングの真実を語っているよ」と。このときすでにミッレミリアは恐ろしく危険なものになっていたんだね。それにしてもすごい人出だ。あちこちの街からやってきたんだろう。みんなに愛されたミッレミリアが私は好きだし、SLRは全時代を見渡しても大好きな車だね。ジェンクスはとても頭のいい人だったな。ユーモアのセンスに長けていて、いい友だちだった。私たちはポルシェが好きで、ふたりとも356を持っていた。ひとつだけ理解できなかったのは、彼はいつでも喜んで情報をくれることだった。彼にとっては大事なメシのタネなのにね。


編集翻訳:尾澤英彦 Transcreation:Hidehiko OZAWA Words:Preston Lerner

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