モータースポーツを芸術として写した人物が当時を振り返る

octane UK



ジョルジオ・スカルラッティとフェラーリ・ディーノ246。1960年ニュルブルクリンク1000kmにて


デニス・ジェンキンソンと私はピットと反対側にあるプレススタンドの席にいた。レースは1000kmの長丁場、永遠に続くかのようだった。しかしジェンクスはこう言った。「いいかい、そろそろフェラーリがピットに入ってくるから準備しておけよ」と。「了解、スカルラッティが入ってくるんだね」と私はライカに90mmのレンズを付けて彼がやってくるのを待ち構えていた。車はピットに入るやいきなり炎を上げ、私はシャッターボタンを押した。まだモータードライブが登場する前の話である。私は巻き上げレバーを括りながら撮り続けた。おかげで連続した火災シーンを手にすることができた。そのうちの1枚はフランスの週刊誌『Paris Match』に掲載された。車から脱出するスカルラッティ、逃げ惑う人々、画面左には交代の準備をしていたロドリゲスの姿も見える。奇妙な話だが、この車はいま、私の個人的コレクションとなってサンタバーバラにある。


フィル・ヒル、フェラーリ・ディーノ156 1958年ニュルブルクリンクにおけるドイツGPにて


フィル・ヒルがフェラーリに入って初めてシングルシーターに乗ったときのもので、車はF2だと思う。プラクティス中のものだね。場所はアデナウ橋に向かう下り坂だ。これは偶然撮れたショットでね、私はカメラを右から左に動かしながらこの写真を撮った。写っているのはフォトグラファーのフェデリコ・カーブスらしいね。誰かがフィルが来たぞというのを聞いてとっさにカメラを構えパンを開始した。だからここに人がいたのは知らなかったんだ。家に帰って現像して初めてこういう構図になっていたことを知った。普通、人が写り込んでいるのは嫌うものなんだが、私は彼が写っているこの写真をとても気に入っているよ。偶然が重なったラッキーショットだね。

編集翻訳:尾澤英彦 Transcreation:Hidehiko OZAWA Words:Preston Lerner

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