もしも「フェラーリ250GTO」を買うことになったら|最高の名車を手にするための財力と労力を解説

GTOを買いたいなら……(Illustration:Mark Sommer)



取引は慎重に進めるべきだ
相場が高騰した結果、取り引きの形態は徐々に複雑化し、ブローカーやエージェントと称する人々がそこに関わるようになってきた。そんな状況を、コリンズは苦々しい思いで見ている。

「本当に鼻持ちならない連中さ。ブローカーと取り引きする気はさらさらない。ヤツラは代金の受け渡しには一切関わらないのに、たくさんの書類を作ってサインしろと命じる。そんなものは時間と金の無駄遣いでしかない」

コリンズの気持ちもわからなくはないが、5000万ドルを越す車の取り引きを、代金と商品を交換して「はい、さようなら」と終わらせるわけにはいかないだろう。ゴッドマン・デリックは、ヴィンテージカーなど高価な品々の取り引きを専門に扱う弁護士事務所だが、同事務所を切り盛りするマーティン・エミソンとダメン・ベニオンはヴィンテージカー売買に潜む恐ろしいワナについてこう語った。

「大事なポイントは、その人物が車を100%所有している事実をいかにして証明するか、という点にあります。実際には、彼のほかに共同オーナーがいるかもしれないし、財政的な支援者がいるかもしれない。そうなると取り引きはきわめて複雑なものになります。抵当権が銀行などによって設定されていないかどうかも重要な点ですし、ときには前妻が所有権を主張することもあります。また、以前リビルド作業に携わっていて、オーナーから代金を受け取っていないという業者が取り引きに対して不服を申し立てる場合もありました」こうした事態を未然に防止するため、彼らは徹底的な調査を行う。それは企業の買収や高額な不動産を取り引きする際に行われるのと基本的に同じことだ。

もちろん、なかには信用ができないブローカーやエージェントがいるのも事実。数年前、あるエージェントがGTOに関する架空の取り引きをでっち上げ、その価格が史上最高記録にあたるとメディア関係者に触れ回った。この人物は、こうすることでGTOの相場をさらに引き上げることを狙ったのだ。価値のない古時計に高値をつけて売りさばこうとするブライトンのアンティーク商も同然だが、事実関係を調べもせずに記事を掲載したメディア関係者も同罪だろう。

取り引きを仲介する仕事の重要性を説くのは、前出のキッドソンも同様である。「本来は経験の浅い買い主ほど、こういったサービスは役に立つものなのですが、私たちの依頼主は概して経験豊富な方々が多いのが実情です。若くてあまり経験のないバイヤーのなかには、こうしたプロセスに価値を見いだせない方が少なくないように思います」

GTOを手に入れるには巨額の資金だけでなく、多くの労力と忍耐も必要なようだが、その価値は本当にあるのだろうか?再びコリンズに尋ねた。「正直にいうと250GTOより330LMBのほうが好きなんだ。いや、P4のほうがもっといいね。とはいえ、これからも250GTOはヴィンテージカーの頂点に立ち続けるはずさ。ルックス、パフォーマンス、希少性、そのすべてを兼ね備えたヴィンテージカーは、滅多にあるものじゃないからね」

そんなキッドソンも、マクラーレンF1が「現代のGTO」になりつつあることは認めるが、それでも250GTOは別格という。もちろん、また大不況がやってくるかもしれないし、すべての物の価値が上がると決まっているわけではない。それでも需要が供給を上回っている限り、GTOの価格は高止まりを続けるだろう。

編集翻訳:大谷達也 Transcreation:Tatsuya OTANI Words:Andrew English Illustration:Mark Sommer

無料メールマガジン登録   人気の記事や編集部おすすめ記事を配信         
登録することで、会員規約に同意したものとみなされます。

RECOMMENDEDおすすめの記事


RELATED関連する記事

RANKING人気の記事