フェラーリの未来を変えたモデル?エンツォも愛した実用的なフェラーリ 250GTE

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レース育ちの心臓と"250"の称号を持ちながら、DB4より安く実用的。"250"フェラーリを手に入れ、その伝説の響きと栄誉を我が物にしたいなら、250GTEほど手頃な入り口はない。ただし、そこには"2+2" という余分な数字もついてくる。フェラーリ愛好家の中には、それを不名誉なことと見るやや偏狭な者もいるのは確かだ。

だが、250GTEがいかに素晴らしい車かを実際に味わってみれば、そんな偏見など気にならなくなる。同時代のフェラーリの中で最も実用的であり、かつアストンマーティンDB4と比べても価格、総合パッケージともに引けを取らないからだ。さらに250GTE 2+2がフェラーリにとってもエンツォ個人にとっても重要な意味を持つモデルであったことを忘れてはならない。フェラーリが、アストンマーティンやマセラティと同じメインストリームの高級車市場へと進出する先駆け的モデルだったのだ。

フェラーリ初の量産4シーターである250GTEが初めて姿を見せたのは、1960年のル・マンだった。そこでコースカーを務めたあと、10月にパリ・サロンで正式に発表されている。"250" の称号が示す通り、その心臓部は"コロンボV12" で、限られた競技用スポーツカーや魅力的なコンバーチブルと同じものだ。デザインを手がけたのはピニンファリーナ。そのプラットフォームは伝説的な250GTツール・ド・フランスと同じものだが、車内空間を増やすため、V12エンジンが8インチ前方に、燃料タンクが後方に移動し、トレッドも広がっている。おかげで車内後部はアストンマーティンDB4より広く、2+2というより4シーターに近い。また、DB4より軽量で、高級感にあふれている。

ひと言でいえば、250GTEはフェラーリの未来を変えたモデルだった。『The Motor』誌でジョン・ボルスターは「ラグジュアリーなツーリングカーとスーパースポーツカーの性格が見事に組み合わされている」と評している。1961年には、フェラーリの全生産台数の実に70%を250GTEが占め、1963年の生産終了までに955台が製造された。それまでのフェラーリ史上で最も成功を収めたモデルであり、本当の意味で初の"量産フェラーリ" だったと言える。しかも大きな利益をもたらした。その成功はDB4と比較するとよく分かる。DB4の製造台数は1113台と少し多いが、製造期間は250GTEより相当に長かった。

だが、栄光の時代はやがて終わる。1970年代以降、多くの250GTEが、競技用の250GTやGTO、コンバーチブルなどのレプリカ製作やレストアのために重要なパーツを提供して、歴史の闇に消えていった。そのせいで多くの人が250GTEの上品な身のこなしを体験できないのは実に残念だ。『Sports Car Illustrated』誌はこう評している。「旅をゴージャスに楽しむなら、"2+2"イコール"ほぼパーフェクト"」出力は240bhp。ロードテストでは、0-60mphが7.5秒で、重いDB4より1秒早く、最高速度は136mph(約220㎞/h)で、排気量の大きいDB4に対して4mphしか劣っていない。また、250GTEのカム・レバー式ステアリングはダイレクトで軽いと高く評価されており、高速クルーズもレイコック・ド・ノーマッヴィルのオーバードライブをオンにすれば落ち着た走りが可能だ。広いトランクを備え、これ以前のフェラーリより工作品質も高い。

1960年10月の発表当時、250GTEの英国での正規価格は輸入税を含めて6326ポンド(約93万6248円)で、ロールスロイス・シルバークラウドⅡより少し高かった。ほかのモデルと英国内の正規価格を比較すると、マセラティ3500GTが5852ポンド(約86万6096円)、ファセル・ヴェガHK500が4739ポンド(70万1372円)、アストンマーティンDB4サルーンが3967ポンド(約58万7116円)、ジェンセン541が3195ポンド(約47万2860円)である。より庶民的な車としては、ミニが496ポンド(7万3408円)、オースティン・ヒーレー3000が1175ポンド(約17万3900円)だった。

1980年代初頭には、平均的なもので5000~6000ポンド(約24万円~88万8000円)、状態の良いものでも1万ポンド(約148万円)で手に入った。バブル期には高騰して8万ポンドを超えたが、1990年代には是正され、1995年~2000年には良質な車の落札価格が2万5000~4万5000ポンド(約370万円~666万円)だった。2000年には、スキャンダルで世間を騒がせたブロケット男爵の250GTEがわずか1万7200ポンド(約254万円)で落札されている。

※2019年3月21日のレート換算
 

編集翻訳:伊東 和彦(Mobi-curators Labo.)Transcreation: Kazuhiko ITO (Mobi-curators Labo.) 原文翻訳:木下 恵 Translation: Megumi KINOSHITA

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