パワフルな一撃!1000万円越えのMGBとは?

Photography:Tim Andrews

これから紹介しようとするMGB、アビンドン・ロードスターを表現するにはこの"パワフルな一撃"という言葉が最も適していると思う。なにしろ、0~100km/h加速が4秒未満という圧倒的なパフォーマンスを発揮するのだ。 

「MGBに5万ポンドだと!」2年前、フロントライン社が手掛けたMGB GT LE50を初めて運転したとき、思わず叫んだことを覚えている。常軌を逸している。この車にそんな大金を払う人がいるのだろうか、と。



それがいたのだ。驚いたことに、フロントライン社はこれまでに32台ものLE50を販売したというではないか。オプションをすべて備えると、価格は7万ポンドを優に超える。ここに紹介したアビンドンと名付けられたモデルは、オプションの数々を標準装備とし、LE50よりもさらなるパワーとトルクを備えたMGBロードスターで、価格を7万9895ポンド(£1=¥148として約1182万円)に設定した。

「MGBが8万ポンドだと!」、そう叫ばずにはいられない。8万ポンドも出せば、もっと性能がよくて快適な新車が買えるのにもかかわらず、すでに4人がこれを買ったというからさらに驚く。状態のよい1960年代後半のBロードスターなら、5000ポンドも出せば手に入る。MGBが最も美しい外観をもつスポーツカーの1台であることに異存はないが、新車の911ほどの値打ちはないと考えるのが当然だ。

フロントライン社が改造を施したMGBを簡潔に説明しよう。まず、独自に改良と強化を図った新品のボディシェルだ。これにマツダの2014年型2.5リッター4気筒エンジンとそれにマッチした6速ギアボックスを搭載。前後のサスペンションにも、増えたパワーに相応しいモディファイを加えている。そして1962年〜1980年のMGの生産時には想像もしなかったであろう、高い水準の装備品とトリムが仕上げだ。

あるオーナーがこのフロントライン・"アビンドン"をオクタンに1日貸してくれた。第一印象はといえば、大幅に改造されているというよりは、年代相応の外観を備えておりクリーンで計算されたイメージだ。いうまでもなく車はスムーズに滑り出し、50㎜のスロットルボディとオメックスのイグニッションを備えた新しいエンジンが期待通りの走りをみせる。煩すぎずに程よいサウンドだ。MGBのオリジナルである3ブランチ・エグゾーストの特徴的な排気音とはかなり異なるが、1960年代のスポーツカーの雰囲気をしっかりと保っている。

電動式パワーステアリング・システム(EPAS)がダッシュボードの下に隠されているため、重いステアリングに四苦八苦することはない。オリジナルのステアリングは重く、過度なキャスター角によって、急なカーブではその重さがさらに増す傾向がある。その対策と
して、現在では電動パワーアシストを備えることが多くなった。"アビンドン"に備わっていたのはフロントライン社がファインチューニングを施したシステムのため、実に自然な感覚が印象的だ。パワーアシストの加減はオーナーが自分で調節することを可能にしている。

フロントライン社の所在地であるオックスフォードシャーヴィレッジを出て、もっと走りやすい道路に向かうことにしよう。コントロール類はすべて適度な負荷に調節されており、新しいスポーツシートのドライビングポジションは実に快適で、乗り心地も安定している。ときおり落ち着きのない挙動を示すが、舗装路面のデコボコにも動揺することはない。トルクは充分で、6段ギアボックスをゆっくりと上げていくことができる。スロットルペダルの踏み込み量は比較的長く、想像よりもリラックスした走りを実現している。

いよいよ、その実力を試すチャンスがきた。右足をぐっと踏み込むと、回転計の針がレッドラインの7800rpmに向かって一気に上昇し、Bが目を覚ます。路面に沈み込むと、一層アグレッシブに加速する。この速さは並大抵のものではない。



私自身が所有するBシリーズBGTよりも、比較にならぬほどパワフルだ。アビンドンはフロントライン社の高速モデルのLE50よりもさらにパワフルな304bhp/6800rpmの最高出力と、33.3㎏m/5000rpmの最大トルクを発揮し、0~100㎞/h加速は4秒を切る3.8秒でこなすスプリンターなのだ。エアロダイナミクスとドライバーの自己防衛反応によって制限されたとして、最高速度は160mph前後(約258㎞/h)だろうか。今回はそこまでのスピードは出さなかったが、新しいエレクトロニクス式スピードメーターの盤面に120mph(193㎞/h)という数字が表示されるまでの時間は信じがたいほど短かった。

編集翻訳:伊東 和彦(Mobi-curators Labo.) Transcreation:Kazuhiko ITO (Mobi-curators Labo.) 原文翻訳:渡辺 千香子(CK Transcreations Ltd.) Translation:Chikako WATANABE (CK Transcreations Ltd.) Words:David Lillywhite 

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