究極のヴィンテージカー ブガッティ・タイプ35を手にするには

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ブガッティのモールスハイム工場で製造されたタイプ35は、7年間にわずか340台だった。この台数でブガッティの名声に計り知れない貢献を果たしたことからも、いかに高性能だったかがうかがえるというものだ。製造台数の少なさは、需要が供給を大幅に上回る状況も生み出している。また、90年近くにわたって競技で使用されれば、過去に修理やリビルドを受けているのも当然だ。そのため、オリジナリティに対する捉え方には異論も多い。ひと口にフレンチレーシングブルーといっても色合いに微妙な差があるように、タイプ35の価値も千差万別である。

タイプ35が登場した1924年は、グランプリカーとトップクラスのスポーツカーがそれほどかけ離れていない時代だった。ブガッティはタイプ35でその間に橋を架けたといえる。グランプリカーは、1990ccのSOHC直列8気筒エンジンで、メインベアリングは5個のローラーベアリングだった。一方、ロードゴーイングバージョンの35Aは、バルブが小さく、メインベアリングも3個のプレーンベアリングだった。

ただ、当初から区別は曖昧で、グランプリ仕様であっても泥よけとヘッドライトさえ装着すれば、比類ないスリルを味わえるロードカーに変身した。

その後さらに3バージョンが登場した。2.0リッターエンジンにスーパーチャージャー搭載のグランプリモデルである35C、ロングストロークの2.3リッターモデルである35T、これにスーパーチャージャーを搭載した35Bである。最も有名で人気が高いのが最後に登場した35Bだ。

どのモデルでも、ロータス・エランにも匹敵するきびきびとした軽快なハンドリングと、素早い変速が可能なギアボックス(リバースパターンなので慣れは必要だが)、溢れ出すパワーが見事に調和した走りを楽しめる。それに加えて、"キャラコ(白木綿)を引き裂くような"音と形容される史上最高のエグゾーストノートがある。一流のヒストリックレースに出れば常に大歓迎を受けるし、グランプリ仕様なら90年前と同じように同時代のライバルに負けることはない。また、優れたエンジニアリングのファンにとって、エットーレ・ブガッティの天才的頭脳の証しが詰め込まれたタイプ35は、いくら追究しても尽きることのない魅力の宝庫だ。

タイプ35の購入を考えている人にとって、立ちはだかる壁が二つある。それは、入口の購入コストとヒストリーの確認だ。主要コンポーネントの修理や交換が問題になることはめったにないが、前提として、製造時までさかのぼることが可能な一貫したヒストリーが確立している必要がある。オリジナルパーツの割合が高く、かつ完全なヒストリーが分かっている車は非常に稀で、それを頂点に微妙な差で多様なレベルが存在する。

したがって、オリジナルコンポーネントの割合や、現在の仕様になってからの年数など、慎重な確認が必要なポイントは多い。特に海外で購入してイギリスで登録する場合は、シャシーにナンバーが刻まれていることが不可欠だ。また、現代では、完全な新車が造られていることも忘れてはならない。

このような地雷原を進むだけの価値があるクラシックカーは多くない。だが、どんな努力にも見合うのがタイプ35である。なんといっても、これ以上のヴィンテージカーはないからだ。

編集翻訳:伊東 和彦(Mobi-curators Labo.) Transcreation:Kazuhiko ITO (Mobi-curators Labo.) 原文翻訳:木下 恵 Translation:Megumi KINOSHITA

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