アウトデルタの魔法│アルファロメオとモータースポーツの歴史

octane UK



私が最初に選んだのはGTAストラダーレである。当然ボディは赤で、まったくオリジナルのダークグレイのインテリアと素敵なウッドリムステアリングホイールが備わっていた。軽いアルミニウムドアをカタンと閉めて、ツイン・ウェバー45の唸りとともにエンジンに火を入れる。ギアレバーのストロークは長いものの、非常に軽く手応えもしっかりしている。GTAをきれいにスタートさせるには回転を上げ気味にする必要があった。

キャブレターのセッテ
ィングによるものか、低回転ではちょっと反応が鈍いところがあるが、そこを過ぎれば問題なく、すぐに思い切ってコースを走ることができた。足回りは思いのほかソフトでコーナーでは大きく傾き、タイヤも盛大に悲鳴を上げるし、またコーナーへ飛び込む際にはブレーキも簡単にロックするが、それでもGTAの1570ccエンジンは6000rpmまで気持ち良く回る。ピークパワーの115hpはもちろんさほどパワフルとはいえないが、ギアボックスは実に気持ち良く、ハンドリングもニュートラルだった。





続いて乗り込んだ華麗なTZは、レーシングカーそのものに見える。実際しばしば"ミニGTO" と言われたものである。ザガート時代のエルコーレ・スパーダがデザインしたこの小さなマシーンは、軽量アルミ構造のおかげでわずか660kgしかない。101台だけしか生産されなかったTZは(TZ2に至っては12台のみ)、今や非常に貴重なコレクターズアイテムであり、その価格はすでに100万ドルに近いとさえ言われている。

低いシートに腰を下ろすと、簡素で機能的なコクピットの目の前には大きなイエーガー製メーターがあり、背後にはスペアのモモ・アルミホイールがベルトで留められている。クラッチはGTAよりずっと重く、すべての操作類も同じく手応えがしっかりしている。大きなサイレンサーを装備しているにもかかわらず、エンジン音もまたかなりのボリュームである。走り出した途端に、TZは本物のレーシング・サラブレッドであると確信した。車高を落とし、サスペンションを締め上げたその車は少しの誤差もなく正確にコーナーをなぞっていく。



ブレーキも抜群で、5.00×15サイズのダンロップ・レーシングが温まるにつれて、TZはさらに鋭さを増していった。エアロダイナミックな軽量ボディに積まれた1570ccのツインプラグユニットは115hpどころか、おそらく140hp近いパワーを生み出しているはずだ。素晴らしいのひと言である。何より重要なことは、優れたバランスと正確さが高いレベルで両立していることだ。美しくダイナミックで、真に偉大な一台である。

Words: Robert Coucher

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