サファリをクラシックカーで巡る!壮絶な体験の数々

Photography: McKlein



タンザニア・セクションは絶景の宝庫だ。木に登るライオンが名物のマニャラ湖や、大地溝帯の西端にあたる断崖などを進む。クルーに大自然を愛でる時間はなかったが、想定以上に長い時間を地元民と過ごすことになった組もあった。ポルシェ911のリアサスペンションのボルトを破損したジャン・ピエール・モンドロンは、サービスクルーが到着するまで待つはめになったが、マサイ族の友人を作る時間をたっぷり持つことができた。

一方、サファリ優勝経験もあるダットサン・ワークスチームでコ・ドライバーを務めたことのあるロフティー・ドリュース(訳註:1973年にS.メッタと組んで240Zで優勝を果たしている)は、2カ所のコンペティティブ・セクションのインターカムが使えず、手信号に頼らなければならなかった(ドライバーのジェイアント・シャーも独自の手信号で答えていたが、果たして理解し合えたのだろうか)。



翌日、ケニア国境へと戻る最初のセクションで最速タイムをマークしたのはヨーランソンだった。ダンカンのカプリは再びパンクを喫し、ブレーキトラブルに苦しんでいたブロンクビストの911は砂州にスタックしてしまう。これ幸いとトップを奪ったド・メビウスだったが、次のセクションでドライブシャフトを破損し、すぐに首位を明け渡した。

全行程のうちの半分の4日目を終えて、ブロンクビストが50秒差をつけてトップに返り咲いた。続いたダンカンは同じセクションで3回ものパンクに見舞われている。10分以上離れての3番手はマルシで、安定したペースを維持して後続に対し10分のマージンを築き上げた。4番手がダットサン260Zのジェフ・ベル。その後方は僅差で、5番手のティーブ・ペレスは、いずれもポルシェ911で追う経験豊富なケニア人2組をなんとか抑えた。両組とも2人がドライバーを務めている。さらに、クロノス・ヴィンテージ・ポルシェ911のフィリップ・ヴァンドロームが8番手、わずか2秒差でジョン・ロイドのバイキング・フォード・エスコートRS1800が続いた。



後半になっても戦いの激しさは衰えず、困難が続いた。アンボセリ国立公園を回り込むセクションでは雨に見舞われ、上位陣は滑りやすいコンディションに苦しみ、後続はやっかいなぬかるみに手を焼いた。ジェフ・ベルの260Zはオーバーヒートに見舞われたが、配線を改造し、他の組や地元のマサイ族から水を提供してもらって走り切ると、次の2カ所のセクションで最速タイムを出した。一方、先頭では2組の一騎打ちが続き、ダンカンが再びブロンクビストからトップを奪ってその差を2分半にした。

翌日は、砂また砂で視界が遮られた。ダンカンはまたもパンクに見舞われたが、「あのセクションに2個しかなかった岩の1個」にヒットしたったのだという。さらにマルツィオ・クラボス/レンツォ・ベルナルディ組のフェラーリ308GT4はエンジンブロー。ペレスと長年コンビを組んでいるコ・ドライバーのポール・ミリントンは、渡河が多く道が複雑に絡まるデラメア卿の地所について、こう表現した。「地図も目印もない夜のウェールズ・ラリーのようだ」と。

ほかの多くの組と違って、ブロンクビスト/パルマンダー組はトラブル・フリーの1日を送り、59秒差でダンカンからトップを奪い返した。

こうしてラリーは再びタイタ丘陵へと向かったが、多くのクルーが「最もきつい1日」と振り返る日となった。ダンカンとブロンクビストはどちらもパンクし、ダンカンがわずか9秒差ながらトップで最終日を迎えることになった。しかし、開けた道では先頭にアドバンテージがあるとは言い切れない。ダンカンのカプリは、最初に出てルートを切り開かなければならないからだ。このイベントでは、簡単な仕事ではない。

最終日にもなると普通では確実にフィニッシュできるようペースを落とすものだが、今年のトップを走る2台のドライバーにそんな考えはなかったのは明らかだ。最初のタイタ丘陵セクションでは、ブロンクビストとダンカンがまったくの同タイム、しかも最速だった。9秒差のまま迎えた第2セクションでは、ケニアチームが30秒ロスしてブロンクビストのリードを許す。しかし、最終セクションでブロンクビストのポルシェ911をパンクが襲った。こうして、最終的にダンカンが3分14秒差で優勝を奪取した。



「前回優勝した2009年大会では、最終日を9分リードで迎えたが、今回は9秒差だった。まさに死闘だった。最後の最後までもつれたから、もしスティグがパンクしなければ数秒差の勝負だっただろう……」とイアン・ダンカンは振り返った。

スティグ・ブロンクビストは、落胆しながらもスウェーデン人らしいクールな態度だった。「もちろん今日はもっといい1日になる可能性もあった。単に貧乏くじを引いてしまったってことかな。運で決まったわけだけど、そういうものさ。特にサファリはね」

ジェラルド・マルシ(911)は、素晴らしく冷静なラリーを続け、4日目に掴んだ3位の座を守り切った。スティーブ・ペレス(260Z)が4位。続いて2013年ケニア・ナショナル・ラリー選手権チャンピオンのバルデフ・チャガー(911)と、同じくケニアのデビッド/アレックス・ホーシー父子(911)が5位、6位に入り、エントリー62台中54台が完走という結果に終わった。

「戦いは最高の見物だったが、私も仲間に加
わりたかったね」とは、クラッシュにより戦列を離れながらコンペティターを追走したワルデガルドの言葉であった。

編集翻訳:伊東 和彦(Mobi-curators Labo.) Transcreation: Kazuhiko ITO (Mobi-curators Labo.) 原文翻訳:木下 恵 Translation: Megumi KINOSHITA Words: Franca Davenport 

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