ジャガー・ランドローバーが自ら自社の遺産をレストアする「クラシックワークスセンター」の全貌

コヴェントリーの絶頂期

ジャガー・ランドローバーが新しく設立するクラシックワークスセンターが完成に近づいた。そこでは一体なにが行われるのか。マーク・ディクソンが取材した。

ここ数年、ジャガー・ランドローバーからニューモデル同様に、古い車も発表されるのを見るにつけ、私は過去の慣習にとらわれずに柔軟に考えるべき時代になったのだと感じるようになった。

柔らかな思考
その初まりはライトウェイトEタイプの生産継続だ。それに続いてジャガー・ランドローバー(JLR)リボーン(再生)プログラムによるランドローバー・シリーズ1のレストレーションだった。その次はXKSS、さらに初期のレンジローバー、そして今回のEタイプ・シリーズ1。これら過去の遺産のプロジェクトのために、JLRはコヴェントリー東南のライトン・オン・ダンズモアに、巨費を投じて新しいクラシックワークスセンターを立ち上げることになった。2017年夏の正式オープンまではこれの多くを語ることは許されていないが、それは、たいへん印象的な巨大さである。これで長いあいだ先を越され続けていたライバルのドイツ勢を英国の自動車メーカーがようやく、追いつき追い越したことになる。

遺産事業
JLRのクラシックカー事業で重要なポイントは、ライトウェイトEタイプとXKSSは「継続生産」。ランドローバー・シリーズ1とレンジローバー、それにEタイプ・シリーズ1が対象の「レストレーション」という、二本の柱を持つことだ。「継続生産」とは、それが生産されていた当時、計画されながら使われずにいたシャシーナンバーを数十年振りに生産を「再開」する車両に割り当てるものだ。これをもって、たとえ最近の生産であっても「継続」生産であると主張する。だがそれらは法規的には英国内の公道を走行できない。他の3モデルは、本物のオールドカーをドナーとして用いるフルレストレーションなので、車のアイデンティティについてはなんらの問題も発生しない。

リボーンレストレーションのコストが、すべてを新しく造るよりずっと低いことはいわば当然であるが、しかしその完成品につけられるプライスタグについては今までの常識を破る数字であることは否めない。ランドローバー・シリーズ1に60万〜80万ポンド、レンジローバーは13万5000ポンド、Eタイプには28万5000ポンドという価格が設定された。これらの価格設定がどのように正当化されるのかを明らかにしていこう。

編集翻訳:小石原耕作 Transcreation:Kosaku KOISHIHARA Words:Mark Dixon

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