賢く買って、価値あるミドシップ・スポーツカーを楽しむ│フィアットX 1/9

octane UK

オリジナルのランチア・ストラトスやカウンタックLP400をガレージに揃えたいが見つからない、そんな人にはフィアットX1/9がお勧めだ。私たちにも買える車の中では、1970年代のベルトーネのウェッジシェイプが最も純粋な形で手に入る。構想時のドラマチックな魅力を失わずに量産に至ったのが、このミドシップ・スポーツカーの最大の強みだ。

フィアットは1970年代初頭にラインアップ
を前輪駆動車にシフト。フラッグシップとなるスポーツカーが必要となったため、ベルトーネと手を組んで構想を練った。前輪駆動車を求めるフィアットに対し、ヌッチオ・ベルトーネとマルチェロ・ガンディーニが提案したのは"ベイビー・ミウラ"のコンセプトだった。当初は懐疑的に受け止められたが、ジャンニ・アニエリはこの案を了承し、まったく新しいシャシーを設計することとなる。ベルトーネにとっては、これがコーチビルダーからメーカーに生まれ変わる契機となった。

X1/9は1972年のトリノ・モーターショーで
発表された。フィアット128の1290ccのエンジンとギアボックスをわずかにモディファイして搭載。それを支えるサスペンションも同じマクファーソンストラット式だが、配置は乗員の後ろに変わった。ベルトーネのモノコックシャシーは、アメリカの厳しい安全基準を念頭に設計され、非常に頑強なロールオーバーバーが組み込まれた。そのため車重は875kgと、サイズに対して驚くほど重かった。

もうひとつの問題が、出力わずか75bhpのエ
ンジンだった。大型のオイルパンと新しいアルミニウム製シリンダーヘッドを備えていたが、パワー不足は否めず、0-60mph加速も13秒と遅かった。それでも、優れた空力性能のおかげで最高速は105mphに達し、ハンドリングは期待通り抜群だった。ただし、短いホイールベースとミドシップレイアウトから、不慣れなドライバーがウェットで足をすくわれることはあった。

X1/9が誇るデザインの純粋さは、バンパー
の拡大によって薄まってしまう。1980年以降はすべての仕様で大型のバンパーが装着された。その一方で、出力85bhpの1.5ℓエンジンと5段ギアボックスを得て、60mph加速が10秒に短縮。優れたシャシーを生かせるだけの最低限のパワーが備わった。

残念ながら、主な開発はそれで打ち止めだった。
フィアットは1982年にアメリカ市場から撤退したため、スポーツカーの存在意義がなくなったのである。しかし、ベルトーネは自社のモデルとして1989年までX1/9の製造・販売を続けた。その後期には、トヨタMR2というライバルが出現する。MR2はデザインをカバーして余りあるパフォーマンスと信頼性を誇ったが、悪いことにその頃にはパワフルなホットハッチの時代が到来していた。スピードで軽々と2シーターを上回り、子どもの送り迎えにも使えるホットハッチに押され、X1/9やMR2の販売は難しくなっていく。

X1/9の生産終了は遅すぎたようにも思える
が、現在では数が減り、非常に見つけにくくなっている。レストアベースや状態の悪い車はまだ出回っているものの、状態のよいものは希少で、市場に出るのも稀だ。フィアット史上屈指の革新的なモデルにもかかわらず、X1/9の価値は意外なほど上がっていない。小型で軽量の痛快なスポーツカーには様々な魅力がある。特にベルトーネのスタイルを濃密に感じさせる車がほしいなら、これ以上のモデルはない。

日本にあり手に入る貴重なX1/9はこちら

編集翻訳:伊東和彦(Mobi-curators Labo. ) Transcreation:Kazuhiko ITO (Mobi-curators Labo.) 原文翻訳:木下 恵 Translation:Megumi KINOSHITA

RECOMMENDEDおすすめの記事


RELATED関連する記事

RANKING人気の記事