ある意味、セダンよりエレガント志向か | プジョー508SWの底力を本国試乗より探る

セダンやハッチバックのみならず、SUVに押され気味なのはステーションワゴンも同じ。対抗策は、カッコいいデザインだけでなく、凡百のSUVにはありえないエフィシェンシ―、手の内にすすんで収まるかのような切れ味。508セダンに一歩も譲らない508SWの動的質感に、プジョーの攻めを見た。


以前、セダンの新型508に国際試乗会で乗った時は、180ps版にはアクティブサスペンションが備わっておらず、300Nmという余裕のトルクでもって加速感でも静粛性でも優るが重量の変わらない225psの方が好印象だった。だがドライブモードの各キャラクターの違いと饒舌さを楽しめるという点では、180ps仕様の方が明確で上といえる。強いて難をいうなら、130km/h巡航でアップダウンのきつい登り坂に差し掛かると、8速で苦しくて6速まで頻繁にキックダウンするのが煩わしいと思うことだった。ただ、エコモードで巡航していれば無用なキックダウンは抑えられるし、日本の制限速度内ならトルクが細いと感じることはないだろう。いずれ気になるのなら、177ps/400Nm仕様のディーゼル版も控えている。

液晶のメーターパネルを小径ステアリングより高い位置で見るレイアウトのi-Cockpitを採用。8インチタッチスクリーンや個性的なトグルスイッチを備えている。

ちなみに今や誰もが必要とする、ADAS機能もレベル2としてかなりの完成度だ。近頃のPSAグループの最新ADASには、修正舵を行うレーンキープアシストだけでなく、アダプティブ・クルーズコントロールをONにした際、車線内でのポジションをメモリーする、レーンポジショニングアシストが効いている。車線内でのピンボール現象、例えば緩い右コーナーでわざわざ左に修正舵を入れるような、怖い挙動をしないのだ。加えてアダプティブ・クルーズコントロールは、巡航時のみならず渋滞の中でのストップ&ゴーにも対応している。ステアリングに手を添えていないと警告は当然なされるが、大雨で視界が相当に悪くなった局面でも、レーンキープアシストはかなり粘ってくれた。逆に追いきれない状況ではインストルメンタルパネル内のオレンジとレッドの表示と、音声で強い警告を発してくる。要はイエスとノーが随分はっきりしている。プジョーは508、508SWの開発キーワードとして「ラジカル」以外に「セレニティ」を挙げているが、これは単なる静けさや遮音性だけを指すのではなく、システムに対するドライバーの信頼感というか、心理的な平静を醸せるクルマ、と理解すべきだろう。

ラゲージ容量は通常530リッター、後席を倒せば最大1780リッターとなっている。フラットなラゲージルームで使い勝手も良い。

実際、こうしたユーザビリティやドライバビリティと併せて、508SWの、質感は高いが感触は柔らかなインテリアの中に身を置くと、ドイツ車や国産車にはない、包まれるような充足感に気づく。それでいてフックレールまで備えた、実用的な荷室すら控えている。508SWのよさは、単なるスペックや経済性といった比較数値というか、絶対値で示せるものではない。もっと深々としたトーンの中にあるというか、歌手の声域の広さのような、諧調の豊かさで選ばれる何かといえる。

新型は508の2世代目。1995年に登場した406SW(写真)、2004年からの407SWの後継となる。ちなみに初代508のセダンは、ミドルクラスの407と上級モデルの607双方の後継モデルでもあった。

文、写真:南陽一浩 Words&Photography:Kazuhiro Nanyo

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