英国の田舎を縦断するクラシックカーラリー│準備もしないで参加した2人の珍道中

Photography: Gerard Brown



最終日は雨だったが、飛ばしていればスクワイアの小さなフロントガラスがほとんどの水をはじき飛ばしてくれた。小さなオープンカーで疾走するのは、能力より我慢強さが試される。水は上からより、フロアの水抜き穴から吹き上がってくるほうが多く、地図がびしょ濡れになった。イギリスで大事なのは、天候ではなく、適切な服装かどうか。私は万全の備えで少し濡れた程度だったが、ジョナサンのキルトの下は冷たい水や風をもろに浴びていた。それでも大して不平も言わない。ただ、時折すっとんきょうな声を上げる。

朝のうちに走り抜けたのは、スコットランドでも最高の道で、感動的なドライブだった。美しいドラムランリグ城に立ち寄ってコーヒーブレイク。小さなスクワイアは本領を発揮し、ジョナサンは実に見事な運転ぶりだった。彼にかかれば、道はさながらダンスフロアと化す。この"コンクール・レーサー" をコーナーからコーナーへと優雅に、だが確実にリードする。



ここからのセクションは道路が閉鎖されており、迂回路へ回る。こちらはつまらない道だ。だが、ストラスヘイブン・ホテルで昼食をとる頃には、あと22マイル(約35㎞)を残すのみとなった。その後もスクワイアは野ウサギのように軽やかに走り続けた。ところがゴールまであと15.24マイル(約24.5㎞)で、プリセレクターギアボックスが癇癪を起こした。ジョナサンが何とかなだめすかして駐車場に入れたが、ギアはスタックしてリスタートしない。ジョナサンは頭を運転席の足元に突っ込んで、携帯で「セシル」と話している。電話の相手はどうやらウィルソン・プリセレクターのエキスパートらしい。そして、ギアボックスを直そうとカバーを引きはがした。騎兵隊も到着したが、あまりに複雑なトランスミッションに皆途方に暮れている。ゴールはすぐ近くのようで、本当に遠い。ここでジョナサンは不屈の精神を見せた。

「よし、ギアボックスのカバーを戻して、押し掛けを頼む。ゴールまでたどり着けるさ。なにしろ俺は赤ら顔のスコッツマンだからな!」

スクワイアは振動するとみごとギアがエンゲージしてピクンと動き出した。次のジョグラリティ・テストは限られたギアで臨まなければならない。私の責任は重大だ。車は1度止まったら、もう走り出せないのだから、道を間違えるわけにはいかない。ジョグラリティは無事やり過ごしたが、まだ油断できない。最後に高速道路のジャンクション上を通過する複雑な交差点を切り抜けなければならないのだ。



ジョナサンには落ち着いてゆっくり走ればいいと言ったのに、相変わらず全開で走ろうとする。トップギアがないというのにだ。ついに最後のコマ図の交差点にさしかかった。私たちにとってこのイベント最大の山場だ。ところがジョナサンはここに来て、しくじった、おしまいだと騒ぎ始めた。この3日間地図の読み方を学んできた私は、650マイル(1046㎞)走ってきて「黙って聞け」と初めて怒鳴り返した。彼は私に従い、待望のグレンイーグルス・ホテルのエントランスへとスクワイアを慎重に乗り入れ、フィニッシュラインを横切った。やれやれ。ジョナサンをひっぱたいたか、それともキスしたかって? まったく、いまいましいヨークシャー男め。

編集翻訳:伊東 和彦(Mobi-curators Labo.) Transcreation: Kazuhiko ITO (Mobi-curators Labo.) 原文翻訳:木下 恵 Translation: Megumi KINOSHITA Words:Robert Coucher and Jonathan Turner 

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