自動車雑貨店だった! 高級ブランドの知られざるもうひとつの起源|AUTOMOBILIA 第9回

ダンヒルの店内装飾品(Photos:Kumataro ITAYA)



現在のダンヒル
現在、ダンヒルはスイスに本拠を置くリシュモングループの傘下にある。同グループにはフランスのカルティエやドイツのモンブランなども含まれている。ダンヒルがリシュモンの一員になったことで、それまでと大きく変わったのは、まずパリ店の陣容が拡充された。たとえば、ロンドンのダンヒルに置いていないようなものでも、パリではみつかることがある。また、モンブランが同じグループにいることから、カルティエとダンヒルの筆記具、特に万年筆は質的に向上したように感じられる。

クルマ発祥のブランドであるダンヒル、英国らしい質実剛健で耐久性に優れた商品展開をしている。



今回の肴
今回も写真が多くなってしまった。それぞれについて簡単に。

□クルマ用応急セット
2005年に発売されたダンヒルによるクルマ用応急セット。自動車用品店だったダンヒルの黎明期を彷彿とさせる商品である。

・応急セット外観
持ち運びに便利な取手のついた専用のケースは、ビジネス用の鞄のような外観をしている。




・応急セット内容(1)
鞄の内側には応急処置の際路面に敷くブランケットや二組の雨合羽(ポンチョ)、二組の作業用手袋、ステンレス製のスクレーパーなどが収まっている。




・応急セット内容(2)
応急セットのなかで異彩を放っているのがこのジャンプコード、他にもダンヒル謹製の自動車応急処置マニュアル(小冊子)や、路面に置くフラッシャ:オレンジのライトが点滅してその先で作業していることを知らせるもの、などがある。




・応急セット内容(3)
懐中電燈も洒落ている。握り部分に革を巻くという、ひと手間かけているところがダンヒルらしい。大分前のこと、プラダも季節のプレゼント用に自動車用工具を売り出したことがあった。プラダによるそれらの工具にも、手のあたる部分には丁寧に革が巻かれていた。




□ダンヒルの店内装飾品
前々から目をつけていたダンヒル店内装飾用の備品を、それらがお役御免になった際、無理を言って分けてもらった。ダンヒルの店内で、これらのベントレー・Rタイプコンチネンタルをご覧になった方もおられるのではないだろうか。




□ダンヒルのブランケット
ダンヒルはことのほかベントレー・Rタイプコンチネンタルが気に入っているようで、同車があしらわれたブランケットまである。残念ながらブランケット自体は現在行方不明で、かなり昔に撮影したピンぼけ写真でお許しいただきたい。




□携帯用胡椒挽き
英国ほどクルマで旅行するのがたのしい土地はない。最近、ロンドンなどではおいしい店も増えてきたものの、やはり英国の地方都市にはおいしい食事が少ない。携帯用の胡椒挽き、これは英国をクルマで旅するドライバー必携である。

・胡椒挽き外観
ダンヒルお得意のライターのような外観。小型で専用の革袋に収まっている。わたしはこれに岩塩と胡椒をいれている。




・胡椒挽き使用時
使用時にはこのようにハンドルを起こす。本体をしっかりと保持してハンドルを回すと、胡椒や岩塩が底の部分から挽かれて出てくる。




・胡椒挽き刻印
底部を拡大してみた。5/50と刻印されている。50個の限定品で日本には3個が正式輸入された。わたしはシングルナンバーが欲しかったのでロンドンとパリで探したところ、シングルナンバーのほとんどはダンヒルのパリ店に備えてあった。




□ダーツのセット
旅先の通りすがりの村で、ふとパブに立ち寄る。映画「日の名残り」のなかにも、クルマで旅する執事がパブに入るシーンが描かれていた。もしそのパブにダーツがあれば、といった情景を想像するのがたのしいダーツのセット。

・ダーツケース
メガネか万年筆でも収まっているかの如き革製のケース。この手のものをつくらせると、ダンヒルはうまい。




・ダーツ内容
ケースを開くとダーツの軸が3本とそれぞれと対になる羽がでてくる。組立はごく簡単。個々の軸にはさりげなくダンヒルと刻印されている。




□ダンヒル謹製トスコイン
3枚セットというのがミソ。1枚はフェアに片面がYES、その裏はNO。ところが他の2枚はそれぞれ両面ともYES、そして両面ともNOになっている。もちろんこれは英国流のユーモアをカタチにしたものだろう。




□ダンヒルのキーホルダー(1)
クルマのキーも変容し、今やキーホルダーなど死語になりつつある。我々の愛する古いクルマの場合キーホルダーは必需品。そこでダンヒルのキーホルダーをいくつか。




□ダンヒルのキーホルダー(1) SDカード
ダンヒルは意外に新しいもの好きな面がある。これは鍵も保持するが併せてSDカードも携帯できるという優れもの。このキーホルダーをみていると「おじいちゃんは25歳」というドラマで、藤原竜也さん演じる25歳のおじいちゃんが、いつも8GBのSDカードを首からぶら下げていたのを思い出す




□ダンヒルのキーホルダー(2)
これらはわたしが現在使用しているキーホルダーたち。便利なので鹿山利明氏の代表作である豆八丁を組み合わせている。ちなみに彼の地におけるセント・クリストファーは、日本でいえば交通安全を祈願する道祖神にあたる。




□お犬ダイス
ウレタン製の小さな豚を用いるお豚ダイスは知っていたのだが、ダンヒルともなると、ダイスが純銀製のブルドッグになる。これも旅のお伴として、宿で暇をつぶす際などに、もってこいである。




□今回の蛇足(1) ライター
やはりダンヒルといえば喫煙具、メカメカしい機械好きにとって、ダンヒルのライターは魅力的。わたしは生まれてから一度も喫煙したことのない非喫煙者なのだが、これらのライターは、作動感、重さ、そして手に収まる大きさ、などに魅かれている。




□今回の蛇足(2) エルメスの犬
一時期フランスへの出張が重なり、エルメス製のキーホルダーに凝ったことがある。同社のキーホルダーはリングではなくチェーンで鍵を保持するタイプが多く、チェーンを外す機構に特色がある。どれも仕掛けが少し秘密めいていてたのしい。この犬のキーホルダーの場合、チェーンが知恵の輪のようになっている。エルメスのキーホルダー全般に共通しているのは、意外と外れやすいこと。この犬も逃げ出すこと10回以上。ダンヒルと較べた場合、エルメスは瀟洒ではあるものの、耐久性は低いように感じられる。

文、写真:板谷熊太郎 Words and Photos:Kumataro ITAYA

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