生き続けるマクラーレン ロングテール│進化の歴史をたどる

octane UK



マクラーレンがLTで実現しようとしたのは、エアロダイナミクスと軽量化に注力し、よりサーキット走行に適したモデルを造り上げることにあった。つまり、マクラーレンが一般大衆(あくまでも相対的な意味だが⋯)に向けて2011年にリリースした初のモデルであるMP4-12C から生まれた650Sの「ハードコアなエボリューションモデル」が675LTだ。

MP4-12Cのデビューから7年が経過し、マクラーレンは積極果敢なニューモデル攻勢を開始した。このおかげでモデル名が複雑化しているのが現状だ。これを改めて解説すると、マクラーレンには3つのモデルシリーズ、すなわちスポーツ、スーパー、そしてアルティメイトを中心に構成されており、ここにLT(ロングテール)、S(スポーツ)、C(クラブ)という3種類の"接尾辞"が付け加えられる。たとえば540Cはスポーツ・シリーズのエントリーモデルで、600LTは同じスポーツ・シリーズのなかでもっとも過激なモデルということになる。

ただし、"過激"というのもあくまでも相対的な評価に過ぎない。マクラーレン全体の序列でいえば、600LTの18万5000ポンドという価格は、アルティメイト・シリーズのトップに君臨するセナの75万ポンドに比べると、はるかに"お買い得"だ。そのいっぽうで、こうもいえる。私は600LTをハンガロリンクで、セナをエストリルでテストする機会を得たが、それぞれの試乗を終えた後でインストラクターによる"全開走行"を体験させてもらった。そのとき味わったスリルは、本質的にどちらも変わらなかったのである。もちろん、セナには最新鋭のエアロダイナミクスが装備されているが、その目的は600LTよりさらに速く、そしてより強力な制動力を実現することにある。ただし、だからといって600LTのオーナーが自分の車に失望することはないだろう。なぜなら、600LTをサーキットで走らせても、思わず息を呑むほどの速さを発揮することは間違いないからだ。



600LTのパフォーマンスは掛け値なしに優れているが、驚くべきことに、先ごろマクラーレンはそれさえ霞んでしまいかねないような発表を行った。600LTがロングテール・ファミリーの一員に加えられたのは、そのプロポーションよりもモデル名によるところが大きいが、左ページの上にその写真を掲げたスピードテールは、1990年代に生まれたF1のスピリットをそのまま現代に蘇らせたモデルといえる。ただし、その伸びやかなスタイリングの原型となったのはGTRではなく、F1ロードカーのほうだ。2020年のデビューが見込まれるスピードテールは、合計で3台がラインナップされるマクラーレンのアルティメイト・シリーズのなかにあってグランドツーリズモに位置づけられる。残る2台のうち、セナは前述のとおりサーキット走行を最優先したモデルで、次期P1と目されるモデルは2025年までのどこかで発表される見通しだ。

往年のF1と同じように、スピードテールも運転席をセンターに設けた3シーターで、すべてが新設計されるところもF1と似ている(ツインターボV8エンジンは基本を流用するものの、ハイブリッド・システムを得て1036bhpを発揮する)。

注目されるのは、前輪には空力的なカバーを装備するのに、
後輪にはこれが与えられない点にある。空力的に大きなメリットが得られないがゆえに後輪にカバーを取り付ないのは明白だが、これが視覚的に面白い効果を生み出しているのも事実で、実にマクラーレンらしい試みだ。

ハイパーカーに相応しい175万ポンドというプライスタグを掲げる点もオリジナルのF1に通ずるところ。ちなみに、これは5年前に発売されたP1のおよそ2倍に相当する。もっとも、現在のF1の取引価格から比べれば、どちらにしても大きな違いはないともいえる。

いずれにせよ、どのモデルもオリジナルとなったGTRロングテールの正当な後継車であり、市場でも高く評価されるであろうことは間違いない。トム・ハートレイJr.もその事実を認める。

「もしもGTRロングテールの売り物を見つけた
のなら、いまが買い時でしょう。マクラーレンはたったの10台しかオリジナル・ロングテールを造りませんでした。つまり、どれをとっても極めて特別な1台なのです。また、ロードカー、ショートテールGTR、ロングテールGTRからなるマクラーレンF1のバリエーションでいえば、ロングテールのパフォーマンスがもっとも高いことは疑う余地がありません」

編集翻訳:大谷達也 Transcreation:Tatsuya OTANI Words:Mark Dixon

RECOMMENDEDおすすめの記事


RELATED関連する記事

RANKING人気の記事