当時を知る元社員に聞くアストンマーティンDB6のインサイドストーリー

octane UK

すでに高い評価を確立していたDB4とDB5に、実用性を加えて誕生したのがDB6だ。当時のファクトリーを知る元社員に話を聞いた。

私たちにDB6が誕生したころのニューポートパグネル・ファクトリーの様子を話してくれたのは、1964~70年にアストンマーティンのサービス管理部長を務めたイアン・メイソンだ。ファクトリーの人々は新しいDB6をどう受け止めていたのだろうか。

「そのころ、製造ラインで働く従業員は、熱意にあふれていました。新しく誕生したモデルに満足し、その製造を楽しんでいる雰囲気が感じられました。新型車が出た時はいつもそうなのですが、事実、DB6は様々な点で大きく進歩し、ファミリーカーとしても使えるようになったのです。ホイールベースが伸びて、後席を有効に活用できるようになりましたからね。個人的には、ファイブのスタイリングのほうが好きなのですが、シックスも非常によい車だと思います」

DB4とDB5は、まぎれもなく美しいグランドツアラーで、高いパフォーマンスを誇っていたが、後席のレッグルームが狭いことを不満に思うユーザーは確実に存在した。DB4シリーズ5とDB5では、それ以前のDB4より90㎜ほど長くされていたが、まだ充分ではなかったのだ。そこで、DB6ではホイールベースを95㎜延長して2585㎜とした。さらに、後席のレッグルームを75㎜、シート幅を100㎜増やしたが、ボディ全長は50㎜の増加にとどめた。このためには、リアの構造を変更して剛性を高める必要があった。そこで、DB4/DB5ではラジエター開口部からフロントウィンドウまでの部分でのみ使用していたシートメタル成形フレームを、DB6ではリアにも採用した。



ボディワークではダックテールに修正したことが目に付く。これはレーシングカーのDP212/214/215と同様のデザインで、これによってリアのリフトが最高速で100㎏低減し、高速走行中の安定性が高まった。また、リアのクォーターガラスが大きくなり、DB4GTザガートにも似た形状になった。フロントにも、DB5コンバーチブルと同じ三角窓が加わった。ルーフも約50㎜上がり、車内のヘッドルームが38㎜増加して、身長が180㎝を超える人でも窮屈ではなくなった。ほかにも目に見える変更点としては、フロントウィンドウを4度寝かしてドラッグを低減。オイルクーラー・インテークの形状が変わり、フロントとリアのバンパーが分割式になった。車内は、計器パネルとトリムに少し手が加えられている。これだけの変更と大型化にもかかわらず、車重はごくわずかに増えただけで、パフォーマンスへの影響はほとんどなかった。

エンジンはDB5と同じDOHC直列6気筒の3995㏄ユニットを搭載、SU製HD8 キャブレターを3基装着して5500rpmで282bhp、4500rpmで288lb-ftと、出力/トルクとも変わっていない。高性能のヴァンテージ仕様は、圧縮比を高めたうえキャブレターを3基のウェバー45DCO9に変更しているが、価格は標準仕様と同じだった(現在ではヴァンテージ仕様のほうがはるかに高値で取引されている)。出力は、DB5のヴァンテージ仕様が314bhp/5500rpmだったのに対し、325bhp/5750rpmに向上、トルクは変わらず4500rpmで290lb-ftだった。



トランスミッションも従来通りのZF製5段マニュアルを標準とし、オプションでボルグワーナー製3段ATが選択できる点も変わらないが、価格は同じになった。パワーロック製のリミテッド・スリップ・ディファレンシャルも同額で選択できた。また、サスペンションもDB5と同じ仕様だったが、運転席でセッティングを選べるアームストロング製"セレクタライド・ダンパー"が、従来のオプションから標準装備になった。デュアルサーキット、ツインサーボのガーリング製ディスクブレーキは従来通りで、ZF製のパワーステアリングがオプションに加わった。 DB6は、1965年10月にアールズコートで開催されたロンドン・モーターショーで、価格4998ポンドで発表されて好評を博した。それも当然だ。ヴァンテージ仕様では0-60mph が6.1 秒、0-100mphも14.9秒で、最高速は148mph(約238㎞/h)だったからだ。しかも、リアクォーターパネル部分の剛性が上がったことで高速域での安定性が増し、後席もまずまず快適に使えるようになった。1966年初めには、早くも注文台帳が埋まった。

DB6は、1台の製造に1名の工員が1200時間かかり、1日あたり4台しか完成しなかった。新たな魅力もさることながら、"007ジェームズ・ボンド"で人気が出たDB5の効果が引き続きDB6の売上に貢献していた。

編集翻訳:伊東 和彦(Mobi-curators Labo.)  Transcreation:Kazuhiko ITO (Mobi-curators Labo.) 原文翻訳:木下 恵 Translation:Megumi KINOSHITA Words:Paul Chudeck

RECOMMENDEDおすすめの記事


RELATED関連する記事

RANKING人気の記事