レーシングカーの走りとショーカーの美しさの「奇跡の共存」|アルファロメオ・スーパーフローIV

1953年アルファロメオ・ティーポ6C 3000CM(Photography:Charlie Magee)



ステアリングは最高だ。感触は一定で、マールズ式ステアリングボックスならではの正確さを見せる。ワイドレシオのギアをシフトアップしていくと、スーパーフローは素早くスピードを上げていった。この大音量のパワフルなエンジンは、6500rpmで最高出力245bhpを発生する。

しかし、なんといっても特筆すべきはその乗り心地だろう。ボディワークがこれだけ低くマウントされていれば、サスペンションのストロークが短く、ガタついたとしても不思議ではない。だが、フロントがダブルウィッシュボーン、リアがド・ディオン式のサスペンションは衝撃を見事に吸収し、スピードを上げたときの接地感も抜群だ。しかも、当時と同じサイズの、比較的細い185 R16のピレリ・チンチュラートを履いているにもかかわらずである。3000CMがミッレミリアの悪路で好成績を収めたのも納得できる。

ディスクブレーキへの移行では後れをとったアルファロメオだが、3000CMのドラムブレーキは傑作だ。フロントブレーキは巨大で、バイメタルのドラムには螺旋状の冷却フィンが付き、その内部に2列に並んだ合計4個のリーディングシューを収める。リアはインボードにマウントされた標準的な仕様だ。この組み合わせが非常に効果的で、硬いペダルを通してバランスよくブレーキングできる。

華やかなイタリアンデザインの粋といえるのが透明なタルガトップだろう。リビルドには慎重な作業を要したが、おかげでプラスチックのローラーを付けたルーフは、レールの上を滑らかにスライドする。ルーフを開けてサイドウィンドウを取り外せば、エンジンの素晴らしい咆哮を存分に堪能することも可能だ。

なんと魅力的なアルファロメオだろう。美しいピニンファリーナのコーチワークが、純血のレーシングエンジンやシャシーと奇跡の共存を果たしている。まさに"ドリームカー"だ。これは間違っても見世物のポニーなどではない。全力でギャロップしたがるレーシング・サラブレッドだ。

1953年アルファロメオ・ティーポ6C 3000CM
エンジン:3495cc、直列6気筒、DOHC、ウェバー製キャブレター×6基
最高出力:246bhp/6500rpm 変速機:前進5段MT+後退、後輪駆動
ステアリング:カム&レバー
サスペンション(前):不等長ダブルウィッシュボーン、コイルスプリング、
ハイドロリック・ダンパー、アンチロールバー
サスペンション(後):ド・ディオン・アクスル、ワッツリンク、コイルスプリング、
ハイドロリック・ダンパー
ブレーキ:4輪ドラム 車重:1000kg 最高速度:推定240km/h

編集翻訳:伊東和彦(Mobi-curators Labo.)Transcreation:Kazuhiko ITO(Mobi-curators Labo.) 原文翻訳:木下恵 Translation:Megumi KINOSHITA Words:Robert Coucher Photography:Charlie Magee 取材協力:スティーブ・ティラック(www.tillackco.com)、イーゴン・ツヴァイミュラー(zweimullercars.com)、ジム・ストークス(www.jswl.co.u

無料メールマガジン登録   人気の記事や編集部おすすめ記事を配信         
登録することで、会員規約に同意したものとみなされます。

RECOMMENDEDおすすめの記事


RELATED関連する記事

RANKING人気の記事