裏庭の垂直離着陸機│飛行機のスーパーカー版 ハリアーを買う

Photography:Jonathan Jacob

Uホーカー・シドレー・ハリアー。1960年代末から70年代初頭にイギリス空軍が誇った夢の垂直離着陸機だ。今やそれが完全に動く状態で手に入るという。

1970年代のハイ・パフォーマンスマシンは、発売当時こそ最先端技術でもてはやされたが、やがて記憶の彼方へと消え去り、価格も一旦は底を打った。ところが今、関心の高まりと共にレストアされるものが増え、価格も急上昇している。これが1970年代のクラシックカーの現状だ。

飛行機の記事のはずだが…と怪訝に思われるかもしれないが、そのマーケットにもまったく車と同じパターンが当てはまる。そして、飛行機のスーパーカー版といえるのが、この1976年ホーカー・シドレー・ハリアーGR3、機体記号XZ130だ。しかも、かつてないほど完全な状態にレストアされて、なんと売りに出されているのである。



同種のハリアーは、1969年に開催された太平洋横断エアレースで優勝したことがある。ロンドンのBTタワーをスタート地点に、ニューヨークを目指すレースだ。ハリアーが優勝できたのは、空港や飛行場へ向かうライバルを尻目に、スタート地点近くのキングスクロス駅の貯炭場から垂直に離陸できたからだった。

したがって、ハリアーを買えば通勤の悩みもいっぺんに解決できる。ただし、排ガス規制には抵触するだろうし、ハリアーの非常に特殊な操縦技術を習得する訓練を受けなければならない。では、買ったところでいったい何の役に立つのだろうか。

少なくとも整地はできそうだ。「エンジンをかけたら、塀を吹き倒してくれたよ」こう話すのは、ジェット・アート・アビエーションのオーナーで、ハリアーをレストア、販売しているクリス・ウィルソンだ。「煙も猛烈に上がった。エンジンを保存するためのオイルの仕業だが、少々やっかいなことになったよ」このエンジン始動に至るまでとその後の苦労は、ちょっとしたものだ。



ヨークシャーのセルビー近郊にあるジェット・アート・アビエーションの敷地を歩き回ると、その納屋や空き地には飛行機がゴロゴロしている。だが、滑走路はない。どれも飛ぶことはできないからだ。このハリアーはおそらく飛ぶことができる。いつか、古い飛行機を飛ばす規制がイギリスほど厳しくない国でなら、新たなオーナーの手で空に舞い上がる日が来るかもしれない。

不完全なトーネードF3が数機、ジャガーも2機ある。グロスター・ミーティアの尾翼の先端に、トーネードの可変翼のシャフトも。こちらのブリストル・オリンパス320エンジンは、開発中止となったTSR2 計画の最後の生き残りだ。ボーイング747などに搭載されているロールス・ロイスRB211エンジンの巨大なフロントファンもあるが、チタン製のブレードがひとつ欠けている。飛行機のパーツが敷地の至るところにある。

それは、こうした品をほしがる人がいるからだ。その希望を叶えるために、クリスと妻のメルは2005年にこの仕事を始めた。クリスはRAFを退役後、キッチンや浴室の取り付け業に就いたが、それに満足できず、飛行機関連の細々した収集品をネットオークションで売り始めた。「そのうちに相当の需要があることが分かった。そして1年もしないうちに、引っ越さざるを得なくなったよ」リーズからブラッドフォードへ引っ越した理由は、裏の物置にキャンベラ爆撃機のエアインテークを保管するためだった。その後も、コクピットセクションやエンジンなどがやって来てはまた去っていった。

編集翻訳:伊東 和彦(Mobi-curators Labo.)  Transcreation:Kazuhiko ITO(Mobi-curators Labo.) 原文翻訳:木下 恵 Translation:Megumi KINOSHITA Words:John Simister 

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