輝きを取り戻したルビー色のフェラーリ│注目されなかった1台のいま

Photography: Michael Bailie

フェラーリ250GTルッソは、60年代のコンペティション・フェラーリの圧倒的な輝きの陰に隠れた存在だった。しかしロバート・コウチャーはこのエレガントなグランドツアラーの真の魅力を再発見したのである。

クラシック・フェラーリの中で最も価値があると見なされ、それゆえに人気を集めてきたのは、いつもレースで活躍したモデルである。

つまり、トゥール・ド・フランスやSWB、GTO、275GTB/4、そしてデイトナといった"コンペティションモデル" こそフェラーリの伝説を象徴するものとして神格化され、そのいっぽうでロードカーはショールームの中でお茶をひいていることが多かった。

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ヒストリックレースやラリーに最適なフェラーリのコンペティションモデルに人気が集中し過ぎてその値段が高騰したために、最近では一部のロードカーも同様に注目を集めるようになった。栄光のレーシングヒストリーを持たないことでいわば軽視されてきた車が、それぞれの魅力によって正当に評価されるようになってきたのである。
 
フェラーリ250GTルッソはその典型的な例だ。
あの250GTOやSWBのいとこに当たるモデルだが、純粋にロードカーとして開発された車である。もちろん、わずか350台しか生産されなかったルッソが特別な車であることに変わりはないが、250SWBが一世を風靡している陰で、ルッソは舞踏会の前のシンデレラのように人目を引くことはなかったのである。



英語で「ラグジュアリー」を意味するルッソは、長いこと週末のドライブのための伊達車と見られてきたが、たとえ精悍なロードレーサーではないとしても、ようやくその本来の美しさによって評価されるようになった。オーナーたちも経験を積んだ結果、ロードレーサーはサーキットやステルビオ峠のヒルクライムのような舞台では文句なしに素晴らしいが、日曜のドライブや高級レストランに出かける足としてはスパルタンすぎてまったく快適ではないと認めざるを得なくなったのだ。

皆さんはリンクス・モーターズ・インターナショナルのジョン・メイストン-テイラーの名前をご存知だろう。素晴らしいライトウェイト・ジャガーやフォードGT40で有名なメイストン-テイラーは極めつけの完璧主義者であり、彼が扱う車はどれも一級品である。セント・レオナード・オン・シーにあるリンクスの工場で初めて見たルッソはとりわけ素晴らしかった。明るい陽光の下に佇む華麗なクーペはあまりにも眩しくてサングラスをかけなければならないほど。その衝撃から立ち直った私の頭に次に浮かんだのは、「有難いことにボディカラーが赤ではない」ということだった。

深いルビー色に塗られたその車は純粋に美しい、100点満点のコンクール・カーだった。艶やかなプラムのような何とも言えないボディカラーは、磨き上げられてキラキラと輝くステンレスとアルミニウムのボラーニ72本スポーク・ワイヤーホイール、そしてノックオンハブと見事に調和していた。そのスピナーが年代的に正確なことをメイストン-テイラーは事細かに説明してくれた。多くのフェラーリはもう少し後の時代の、"正しくは" オリジナルとはいえない形状のスピナーを備えているが、ほとんどの人はそれを問題にはしない。ただし、メイストン-テイラーだけは例外である。

編集翻訳:高平 高輝 Transcreation: Koki TAKAHIRA Words: Robert Coucher 

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