335台のクラシックフェラーリを検査してきた人物にインタビュー

octane UK

トニー・ウィルスは、英国でフェラーリ・クラシケのプログラムを運営するコンサルタントだ。主な仕事は年代物のフェラーリが、オリジナルスペックに準拠しているかどうかを明らかにする証明書を発行することだ。年間約25,000マイルを国内で走りまわり、最低でも1カ月はイタリアの工場に飛んでいる。彼はこれまで英国内において、335台のフェラーリを検査した。

彼が自動車販売の世界に入ったのは1971年のことだ。そして、初めてフェラーリと関わったのは4年後の1975年。当時勤めていた会社が、フェラーリのフランチャイズ権を獲得したのがきっかけ。トニーはそれ以来、フェラーリ・オーナーズ・クラブのメンバーである。1993年にはマラネロ・セールスに、ジェネラルマネージャーとして入社し、2001年にはマラネロ・コンセッショナリーズのダイレクターとなった。そして、2004年にフェラーリが直輸入制度を始めた際に、フェラーリのコンサルタントになった。

クラシケ・サティフィケーション・スキームは、基本的には製造から20年以上経過したフェラーリが対象だが、エンツォやF50、そしてFXXなどの限定車も対象としている。車をイタリアに送る代わりに、彼は英国内で検査を行う。通常は認定フェラーリ・ディーラーまたはスペシャリストのもとで検査を行うのだが、それが叶わなくても適切なリフトさえあれば、どこでもいい。鑑定の申し込みがあると、まず、その車が修理を受けたことがあるかどうか、ということについて訊ねる。

F40のような車はTubiのエキゾースト・システムを装備していることが多い。その場合は一度取り外してから一般のエキゾーストを取り付ける必要がある。

「現在走っている車は、2012年仕様になっているか
もしれませんが、工場出荷時の状態ではありません。燃料ライン、燃料タンク、ブレーキ・キャリパーといった部品が、アップデートされた可能性があります。しかしこういった改造は、短時間で取り外し、工場の認定ガイドラインに準拠するよう、オリジナルのコンポーネントを再度取りつけることができます。工場出荷時と違う車は、鑑定書を得ることはできないんです」と認定基準を語る。

308のようにシンプルな車は、数時間で検査が終わる一方、今年も2台の検査を行った250GTOなどは、丸1日かかってしまうのだとか。歴史や価値のある車には、シャシーのX線試験を行う必要があるからだ。塗料を剥いで、ベアメタルの状態に戻し、携帯用の機械を使って、メタルの要素構成を調べる。それにより、違う材料を使用してシャシーが修理されていないかどうかといったことがわかる。また、レーシングカーは、クラッシュして、間違ったチューブを使用して修理された可能性もある。現代人はオリジナリティにこだわるので、正確でなければならないのだ。

また、様々なボディ、シャシーの測定値、アクスルのセンターラインなども確認する。車がひどく曲がっていたら、数値がその事実を示すはずだからだ。さらに、あらゆるナンバーや、主要なコンポーネントを含め、各車両に対して約150枚の写真を撮る。それからレポートを書き、すべての書類をまとめ、マラネロへ持っていく。オーナーに代わって各レポートのフォローをし、工場が納得のいかない点があれば、折り返し連絡をする。もし、シャシーに何か問題があれば、工場でそれが解決できるように手配する。そうしてクライアントは、自分の車がフェラーリに認定されたら、鑑定書の料金のみを支払い、立派なケースに入った、鑑定書一式を受取ることになる。

マラネロ・コンセッショナリーズが輸入を止めた際、全ての記録はシュレッダーにかけられることになったが、彼はその記録を譲り受けた。何しろ、1959年に遡る膨大かつ重要な記録だからだ。それ以来、彼は記録をどんどん増やしている。そして、これらは、間違いなく英国の車の鑑定に役立つことだろう。オーナーに対してレストア、または車の出所に関するサポートサービスを行うとともに、オークションハウスやライターに情報の提供もしているのだという。

また、個人の顧客向けにフェラーリの検査もしている。サロン・プリペと、ウィンザー・キャッスル・コンクールの
運営委員会の一員でもあり、FIA(国際自動車連盟)のヒストリックパスポートの書類にも携わっているから、ほとんど手いっぱいの状態だというトニー。そんな彼の楽しみは、ゴルフや、芝生をストライプに刈ること。そして夜には、ワインをグラスで数杯楽しむ。それから9時半ごろ、ソファーで寝ているところをジェーンにたたき起こされベッドに入る、そういう日常なのだという。

編集翻訳:松尾 大 Transcreation: Dai MATSUO 原文翻訳:渡辺千香子(CK Transcreations Ltd.) 

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