走る芸術品│初代アウディTTを探る

Photography Paul Harmer

初代アウディTTの優れたスタイリングは、果たしてバウハウス美学の最適表現なのか。ジャン・コクトーに言わせると、スタイルとは「複雑なものをできるだけシンプルに表現すること」らしい。21歳になるこの車に、なんとも相応しい説明だ。

ゴルフの部品の寄せ集めとも言われ、四駆のおかげでハンドリングはマシだが、高速時の不安定
さによるリコールもあった。法規制による強制的なリアスポイラー装着により、その素晴らしいスタイルが台無しにされるという経緯もあった。



ともあれ初代TTは、カーデザイナーによる芸術の最高レベルの具現化といえる。正にコクトース
タイルの傑作だ。その名称は、関連会社NSUのバイクによるマン島のレース”Tourist Trophy”での初勝利に由来する。(実は”エーデルワイス”と名付けられる予定だったので、”TT”に変更されて本当に良かった!)

現行のTTにも初代の面影は残ってはいるが、この初代こそが最も純粋な芸術品といえよう。その理由は、豊かに円を描くホイールアーチ、アシンメトリーに配置され大型レンズにつながるバックライト、航空機を彷彿とさせるフュエルキャップ、同芯の円が重なるギアレバーとラバー製カバー、全てが円形で統一されたノブやボタン類など、枚挙にいとまがない。





この芸術品は、1936年型アウトウニオン・タイプCの忘れられない想い出を蘇らせた様な車だ。4
つの輪のロゴ以外に共通点はないのだが。

また、最も影響力のある近代芸術の学校バウハウスのマニフェスト、「アート&テクノロジー」に
も通ずるものがある。そして、建築学的なモダニズムさえも感じさせるTTには、ル・コルビュジェへのオマージュも垣間見える。



初代TTのオーナーである重要な人物に、建築家のフィリップ・ジョンソンがいる。かの有名なル
ートヴィヒ・ミース・ファン・デル・ローエのアシスタントを務めた人物だ。彼はコルビジェらの建築物を「インターナショナル・スタイル」と評している。MoMAのカーデザイン展示会では「走る彫刻」と表現したが、有名なシーグラム・ビルとコネティカット州の自宅との往復に使ったAudi TTについては、「走る建築」と呼んでいたのだろう。




2001年式 Audi TT 1.8T Quattro 225
エンジン:1781cc DOHC 20v、ターボチャージャー、4シリンダー、Bosch Motronic製燃料噴射
出力: 221馬力 @ 5500rpm
トルク: 207lb ft @ 1950-5000rpm
トランスミッション: 6段マニュアル、四輪駆動
ステアリング:ラック&ピニオン、パワーステアリング
サスペンション:
フロント:マクファーソン・ストラット、コイルスプリング、アンチロールバー
リア:ダブルウィッシュボーン、コイルスプリング、テレスコピックダンパー、アンチロールバー
ブレーキ:ディスク、フロントは通気式
重量:1465kg
最高速度:151mph (243km/h)
0〜62mph(99.8km/h): 6.4秒

抄訳:東屋彦丸 Transcreation: Hicomaru AZUMAYA

RECOMMENDEDおすすめの記事


RELATED関連する記事

RANKING人気の記事