究極を追い求めて│ジャガー Eタイプの歴史に新たな1ページを加えた1台

Photography: James Lipman

伝説的レーシングカーからインスピレーションを受けて奇跡的に誕生したイーグル・ロードラッグGT。現代のスーパーカーにも対抗できるこの車が、ジャガー・Eタイプの歴史に新たな1ページを加えたことは間違いない。

青い光を放つこの美しい車は、1968年ジャガー・EタイプFHC 4.2である。Eタイプの中でも最高のパフォーマンスを発揮すると多くが認める車だ。しなやかにして繊細、複雑な形状と磨き抜かれたディテールからなる傑作。秋の日差しに淡く輝く姿を見ていると、1960年初頭のモノクロームの時代に、この車がいかに大きなインパクトを与えたかは想像に難くない。

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そんなほぼ完璧とも言えるスポーツカーをさらに改良することなど、本当に可能なのだろうか。Eタイプのデザイナー、マルコム・セイヤーの気持ちになって解説を進めてみよう。



当時ジャガーは、Dタイプのル・マン優勝で勝ち取った名声を維持しながらレースを続けていきたいと考えていた。そこで、マルコム・セイヤーが市販のEタイプの軽量版である「ロードラッグ」のデザインに取りかかったのだ。ただファクトリーが製造したのは1台のみ。EC 1001、通称"CUT 7" であった。さらに2台の「ライトウエイト」がロードラッグ仕様に変更された。

1台は49 FXN(これとCUT 7
は最近までカウドレー子爵の所有だった。)、もう1台はリンドナー/ノッカー組の登録ナンバー4868 WKの車両である。より低く流線型になったロードラッグは、標準型Eタイプよりスポーティに見え、セクシーですらあった。新しいボディでは、フロントガラスのアングルを傾け、リアのファストバックを大きく修正。セイヤーはこれを開発するにあたり、MIRAの風洞施設でジョン・クームのフェラーリ250GTOとの比較を行った。すると、GTOは空力的に優れているものの、大きなインテークと通気口でそれを損なっていることが分かった。ロードラッグと比べると前面が10.5%広く、空力的なドラッグも10.5%大きかったのである。だが、5段ギアボックスを備えたフェラーリのほうが加速性能に優れており、テストコースでノーマン・ドュイスが走ると、ロードラッグより約0.5秒速かった。

そのため
ジャガーは、より軽量なオープンタイプのロードスター「ライトウエイト」の開発に力を注ぐことにした。4WPDとして登録された1台目のライトウエイトは、ロードラッグより70kg以上軽い920kgで、GTOに対して45kgの軽量化に成功。燃料噴射の採用で300bhpのパワーを生み出し、5段ギアボックスで加速力も良くなった。だが確かにレースには最高だが、長距離ドライブに使うとなると快適性が足りないかもしれない。では、究極のジャガーEタイプを今作るとしたらどうすべきだろうか。ロードラッグのデザインに、標準仕様のEタイプが持つ優れた運転性能を組み合わせ、さらにアップグレードできたら……。

編集翻訳:堀江 史朗 Transcreation: Shiro HORIE 原文翻訳:木下 恵 Translation: Megumi KINOSHITA Words: Robert Coucher 

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