ジョアッキーノ・コロンボが残したV12エンジンの素晴らしさとは?

Photography:Paul Harmer



上記の新しいヘッドは、コロンボ・エンジンの進化を見るうえで重要なキーポイントである。驚くべきことに、3.3リッターの275モデルはまだオリジナルの125と同じ浅型のウェットライナーブロックを使っていた。ブロックの下端はクランクシャフトの軸線と同じで、深いブロックを持つランプレーディのエンジンとは一線を画していた。もちろんそれは159、166、195、212、225、250の各エンジンにも使われたし、125と159を除くすべてのモデルは58.8㎜のストロークだった。

275モデルは250からさらにボアを広げて3.3リッターとしたため、かなりのオーバースクエアになったのだが、さらに排気量を大きくしたのが今日でいうビッグブロックである。330と呼ばれる1960年400スーパーアメリカの4リッターエンジンは、オリジナルブロックを極限まで拡大した。そこで1963年の330GTで広いボアスペースを有する、よりビッグなブロックが登場することになる。

275は1967年の275GTB4用にツインカムヘッドが載り、カムシャフトの数を表わす末尾の数字で高性能を標榜した。追われる立場になった330はボアを広げて1気筒あたり365㏄とした365GTC 2+2を送るもインパクトに欠け、翌68年にツインカムヘッドを載せた365GTB4を登場させて面目を保った。コロンボ・エンジンはこうした高性能化にすべて対応できたのである。

もともとは小排気量が特徴だったコロンボのV12も、ついに初期のランプレーディの排気量を超えるときが来る。5リッターの時代だ。コロンボの血が流れる最大級のエンジンが、1964年500スーパーファストの4962㏄である。これはランプレーディの最後の作品である410スーパーアメリカの排気量と奇しくも同じだ。その後大排気量はしばらく作られなかったが1976年、4823㏄が400サルーンで復活。500スーパーアメリカと比べてストロークは10㎜長い78㎜だが、1986年に4943㏄となる412でもまだボアのほうが大きく、その意味でこれがコロンボの血を受け継ぐ最後のエンジンとなる。その後のフェラーリがまったく異質な180度V12の"フラット12"や、456用の65度V12などに手を広げていくのはご承知のとおりだ。

しかし、コロンボの顔ともいえるスモールブロックや2カムユニットのエンジンをいま見ると、彼のエンジンに懸けた思いが今も伝わってくる。最後はジェームズ・コッティンガムの言葉で締めくくろう。

「 我々がいまカムシャフトやピストンやチェーン、ベアリング、
ガスケット、それにバルブステムのオイルシールなどを改良したといっても、その進歩はごくわずかなものでしかない。性能を上げる必要もないよね。コロンボたち先達のおかげでエンジンはすでにパーフェクトな域に達しているんだよ」

編集翻訳:尾澤英彦 Transcreation:Hidehiko OZAWA Words:John Simister

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