ピニン・ファリーナがただ1台だけ手掛けた「希少種」|ジャガーXK120

1954ジャガーXK120SE ピニン・ファリーナ(Photography: Matthew Howell)



ピニン・ファリーナらしさとは
私たちはPFXKを片側に寄せ、詳細に観察することにした。第一印象は控えめな優雅さだ。ピニン・ファリーナは、賢明にも特徴あるヘッドライトとラジエターグリルの「ジャガーフェイス」を残している。フロントフェンダーも人々がXKに望むように曲線だが、オリジナルよりさらに低めたため、カムカバーのフロント側化粧ナットがボンネットに干渉してしまう。これをクリアするためボンネットには2個の小さな涙滴型バルジが設けられた。オリジナルの配色である、ルーフをペイルメタリックグリーンとし、ボディを濃いめのオリーブグリーンとしたデュオトーンは、共色に塗られたワイヤーホイールと相まって、とても控えめで上品である。さらには、クロームのヘッドランプサラウンドやサイドライト、スタイリッシュなバンパー、Cピラーにつけられた小粋なマーシャル製のマーカーライトなどなど、ピニン・ファリーナらしさを強調する数々のディテールが美しい。

全長に対するリアホイールの位置が前方すぎるように私は思うが、これは長いテールセクションのゆえんであり、デザインバランス上は一応解決している。広大なリアウィンドウ、幅が広く大きなトランク、長いフェンダーなどからなるPFXKのリアは、フロント部に比べるとあまり魅力的とはいい難く、オリジナルXKのスマートで曲線美のリアビューほどキュートではないようだ。

私にとって室内は至極快適だった。ドアを開けばビビッドな黄土色のコノリーレザーが放つ魅力的なアロマに圧倒される。ステアリングはスプリングスポークを持つジャガーXK120の標準品だが、スミスのスピードメーター、レヴカウンターなどがドライバー前面に移されたダッシュボードは共色のレザーで覆い尽くしたPFXK独自のデザインだ。シートもパディングを増やし横方向のホールド性が改善されている。ドアの内張、アームレスト、プリーツやポケットに高質なイタリアンテイストが滲んでいる。クロームのウインドウ・レギュレーターとドアの引き手は、同時代のフェラーリやランチアに見られる典型的なピニン・ファリーナの真骨頂だ。

CMCは細部に至る検証、クラフトマンシップ、そして最新の技術でPFXKをオリジナルコンディションに戻すだけでなく、それ以上に仕上げているが、オンロード性能が向上していることに驚かされる。これによって、眺めているよりドライブを満喫すべき車に仕上がった。XK120SEピニン・ファリーナが、ジャガー・クーペの象徴であるオリジナルXK120フィクストヘッドクーペより美しいかという問いには答えられない。問題があるとすれば6万4000ドルかそれ以上のプライスタグかもしれない。だが、これは売り物で、唯一の存在というコレクターズアイテムなのである。もしオーナーとなったなら、ジャガー生来の精神も是非とも楽しんでほしいと思う。跳ね石傷はなど気にせずに…。
詳細:classic-motor-cars.co.uk.


完全に調和したボディスタイリングは、オリジナルXKの流れるようなフェンダーラインの上に成り立っている。しかしグリーンハウスから後ろのプロポーションは何かぎこちない。


1954ジャガーXK120SE ピニン・ファリーナ

エンジン形式:3442cc、直列6気筒DOHC、1 3/4 SUキャブレター×2基
排気量:5401cc 最高出力:180bhp/5800rpm
最大トルク:240lb-ft/4000rpm

変速機:前進4段MT、後輪駆動 ステアリング:ラック&ピニオン
サスペンション:(前)独立式、ダブルウィッシュボーン、トーションバー、
レバーアームダンパー、
(後)リジッド式、リーフスプリング、レバーアームダンパー
ブレーキ:ドラム 重量:1290kg 性能:最高速度120mph

編集翻訳:小石原耕作 Transcreation: Kosaku KOISHIHARA (Ursus Page Makers) Words: Robert Coucher Photography: Matthew Howell

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