今が買い?希少種の「モダンアート」デトマゾ・ヴァレルンガ

Bonhams

1966年にMoMA(ニューヨーク近代美術館)で、「レーシングカー 車における合理性の追求」と題する企画展が開催された。そこには、ロータス32やポルシェ906、速度記録を更新した"ゴールデンロッド" や"スピリット・オブ・アメリカ" などが展示されるなか、当時はあまり評価されていなかったデ・トマゾ・ヴァレルンガもあった。

このとき、初めてヴァレルンガという車を知った人も多かったことだろう。だが、アルゼンチン、イタリア、イギリスが合作した小粒なクーペは、まさにこの企画展にふさわしいモデルだった。後に続くデ・トマゾのスーパーカーとは対照的に繊細優美で、マングスタやパンテーラよりも、デ・トマゾが造った機敏なシングルシーターに近い存在だった。車重はわずか700kg で、バックボーンシャシーに、ギアが造ったグラスファイバー製ボディ、ミドシップにツインウェバーを備えた1.5リッターのフォード製"ケント" エンジンを搭載し、四輪にディスクブレーキが奢られた。必要なものだけを備え、一切の無駄を省くとい、見事なまでに"合理性を追求" していたマシンだった。

他のメーカーなら、もっと排気量の大きな派手なエンジンを選んでいただろう。しかし、ブリティッシュ・フォードの質実剛健な"ケント" ユニットは、出力105bhpにチューンアップされ、最高速も210km/hほどに達し、ハンドリングに優れたこの車にとって理想的な組み合わせだった。

ところが、評価は芳しいものではなく、売れ行きは伸びなかった。アレハンドロ・デ・トマゾが、例によってすぐに別のモデルに目を向けたこともあり、ヴァレルンガはわずか58台だけを造ったのみで1968年に生産を終了した。

その後は、単なる珍品扱いされていたが、最近になってようやくコレクターから真剣な関心を寄せられるようになった。特に優れたものは、わずか2年の間に価格が二倍に跳ね上がっている。写真の車は間違いなく最上の1台だ。そのため、推定落札価格も32万~36万ユーロに上った。

このシャシーナンバー"807DTO126" は、新車でスイスに納められたヒストリーがある。2000時間におよぶレストアを受け、2004年に完成すると、早速、ヴィラ・デステのコンクールでクラス2位に輝いている。10年以上が経過した今でも傷ひとつない最高のコンディションのようだ。格安とはいえない金額だが、それに見合う価値があるのは間違いない。

編集翻訳:伊東 和彦(Mobi-curators Labo.)Transcreation: Kazuhiko ITO (Mobi-curators Labo.) 原文翻訳:木下 恵 Translation: Megumi KINOSHITA

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