抜群のコストパフォーマンスを誇るクラシックジャガーとは?

Photography: Amy Shore

ジャガーMk Xの大きな車体が何かで隠れるところは想像しにくい。だが実際に、後継のXJ6や人気の高いMk2の陰に常に隠れてきた。正当に評価されず、発売当時も大ヒットしたわけではないため、クラシック・ジャガーの中でも見過ごされがちである。

フラッグシップのMk Ⅸが古さを感じさせるようになったため、後継として1961年に発売されたのがMk Xだ。先行車から引き継いだものはほとんどない完全な新モデルだった。英国車の中でも特に大きく、車幅は1992年にXJ220が登場するまで最大だった。高級感と快適性はもちろん、スポーティリムジンの草分け的存在でもある。

スポーティといってもことさら速いわけではない。それでも、トリプル・ウェバーのXKエンジンは出力265bhpで、2トン近い車重ながら0- 60mph加速は10秒以下、最高速は120mphに達する。初期モデルはモス製4段MT か、より人気の高いボルグワーナー製3段ATを選ぶことができた。リアサスペンションはEタイプから派生した独立式で、4輪ディスクブレーキとパワーステアリングを装備し、1800kgのサルーンとは思えないほど機敏な走りを可能としている。

燃費の悪さは否定のしようがないものの、一度に大人6人が乗ってもすこぶる快適なのは大きな利点といえる。このサイズは、イギリス市場では大きなセールスポイントではなかったかもしれないが、ジャガーが主に狙っていたのは、大きいことがマイナスとならないアメリカ市場だった。

1964年にはMk Xに幾つもの改良が施された。なかでも最大の変更点は、4.2リッターに拡大されたXK エンジンと、オールシンクロメッシュに改良されたマニュアルギアボックスの採用だろう。オートマチックもよりスムーズになり、ブレーキとパワーステアリングも大幅にアップグレードされた。また、ガラスのパーティションを設けたリムジンモデルが新たに加わった。

さらに2年後には車名が420Gに改められ、外観に手が加えられた。新たにツートーンカラーが登場し、サイドにはクロームのラインが入り、フロントのグリルはわずかに拡大されてセンターにバーが加わった。製造品質や信頼性など、それまでの問題点が解消されている点で、シリーズ中最高のバージョンといえる。1970年、MkXの製造は2万5212 台で終了した。

思えば奇妙なことだが、後期の車ほど価格は低い。ただし、今日ではどんなMk Xであっても見つかりにくくなっている。コンディションのよいものはなおさらだ。価格はMk2やEタイプより低くても、レストアの費用はほとんど変わらない。したがって最初からベストの1 台を購入することが、のちの苦労を避ける上で重要となる。

ここ数年は価格が上がりつつあるが、それでもMk Xは極めてコストパフォーマンスの高いクラシックカーだ。状態のよいものはサイズに似合わぬ走りを見せる。完璧なコンディションの1 台なら、どんなに高い車にも負けない気品と貫禄が手に入るだろう。

[価格] 
近年は価格が上昇しているが、
それでも他のジャガーサルーンに比べればかなり安い部類だ。賢い買い物をすればコストパフォーマンスは驚くほど高い。最も希少なのは初期の3.8ℓモデル、特にマニュアル仕様だ。後期の4.2リッターや420G のほうが安く手に入る。ただし、レストアの元を取るのは依然として難しい状況にあるため、重要なのはコンディションのよさだ。

見栄えのよいきちんとした車を探すなら、狙い目は1万~ 2万ポンド。ただし、完璧なものに近づくと最低でも4万ポンドはするのが現状だ。

[注意点]
XK エンジンが健康な状態か
どうかを必ず確認すること。リビルドの費用は高額だ。また、エンジンが温まったら油圧から目を離さず、リアのメインシールからオイル漏れがないかチェックする必要がある。冷却システムがきちんとメンテナンスされていることも不可欠だ。

マニュアルトランスミッションは希少。
強度ではオートマチックが上回る。Mk X はどのタイプもハンドリングと乗り心地が抜群だ。ルーズな感じがする場合は、ダンパーの疲労やブッシュの摩耗が疑われる。

編集翻訳:伊東和彦(Mobi-curators Labo.) Transcreation: Kazuhiko ITO (Mobi-curators Labo.) 原文翻訳:木下 恵 Translation: Megumi KINOSHITA

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