イギリスに壮大な新博物館の計画が

イギリスに壮大な新博物館の計画が



しかし、クラシックカーだけの博物館にはしないとマリンは話す。「過去を賛美するだけでなく、未来にも目を向けたいと思っています。ピーターセンでは、ピクサーやマイクロソフト、アートセンター・カレッジ・オブ・デザインと協力し、バーチャルリアリティのソフトを活用して大成功を収めています。実は、ピーターセンのリニューアルですべての内装を担当したシーニックルート社がこのプロジェクトのために尽力してくれているんですよ」

「過去の美を目にするだけでなく、未来のビジョンに触れる機会を作れば、伝統的な博物館とはまったく異なる形で全体をまとめられると考えています」

中心となる博物館の周囲にはワークショップやデモンストレーションコースを設け、収蔵する車を走らせたり来場者が試乗したりできるようにする。また、コース脇にはイベントや新製品の発表で使用できる建物を設ける予定で、既にベントレーが2階建ての専用パビリオンに強い関心を示しているという。ワークショップでは、地元の大学と協力して訓練プログラムや奨学金制度を設け、貴重な技術を次世代に引き継ぐ場とする。

プロジェクトの資金を集める一助として、博物館の周囲にサイズの異なるロッジを28棟建設し、所有するクラシックカーを博物館で展示する意志のあるエンスージアストに休暇用別荘として販売する。近隣にある会員制の高級リゾートクラブ、ソーホー・ファームハウスの存在も魅力につながるものと期待されている。

提案の中には、1200~1400万ポンドを投じて、グレートテューにある古いマナーハウスを修復する計画も含まれている。蒸気機関のボルトン&ワット社で有名なエンジニアのマシュー・ボルトンが19世紀中頃に再建・拡張した建物だ。グレード2の文化財に指定されているが、20世紀に入ってから長く放置されている。そのため、これほどの金額でも、建物の保存と維持に必要な「最初の修繕」費用にしかならないだろうという。

コッツウォルズ地方での建設計画には、ある程度の反対がつきものだ。既に数件の反対意見が表明されており、特に地元に住む『スター・トレック』で有名な俳優のパトリック・スチュワートは、「特権階級向け」のプロジェクトだとして反対している。キアラン・ヘディガンはこう反論する。「これほど事実と異なる主張はありません。ザ・マリンの重要な目的のひとつは、所得や年齢にかかわらず、あらゆる世代の来場者に資することです。このプロジェクトによって、雑草の生い茂る工場用地が、祖父母世代から孫世代まで、誰でも楽しめる場所に変わるのですから」

ピーター・マリンもこう語る。「私にとってこれは投機的事業などではなく、レガシープロジェクトです。自分が収集した車を多くの人々と分かち合い、次世代を刺激する学びの場を生み出すことが、心の底からの願いなのです。私のコレクションはすべてヨーロッパ生まれですから、それを里帰りさせるまたとない機会でもあります」

『Octane』もこの胸躍るプロジェクトを支援していく。続報は進展があり次第お伝えしていく予定だ。


提案されているグレートテューのマリン博物館を北から見たイメージ図。
1/博物館 2/ベントレー・パビリオン 3/ショールーム
4/売店やワークショップ、ゲートのある広場 5/来場者入口
6/搬入口 
7/中央駐車場 8/コンコースエリアと展望台
9/試乗コース 10/保全用ため池 
11〜14/休暇用ロッジ
15/ソーホー・ファームハウス 
16/オックスフォード・スポーツフライング社
17/エンストン飛行場工業団地

編集翻訳:伊東和彦(Mobi-curatorsLabo.) Transcreation:Kazuhiko ITO (Mobi-curatorsLabo.) 原文翻訳:木下恵 Translation:Megumi KINOSHITA Words: Mark Dixon

無料メールマガジン登録   人気の記事や編集部おすすめ記事を配信         
登録することで、会員規約に同意したものとみなされます。

RECOMMENDEDおすすめの記事


RELATED関連する記事

RANKING人気の記事