ベントレーの至宝│惚れ込んだあまりに乗らなかった車

H&H Classic auctions

毎年ダックスフォードの戦争博物館で開催されるH&Hのオークションは、シーズン後半のハイライトとなっている。2018年も例外ではなかった。そのカタログは、オールズモビル・カーブドダッシュ(推定3万4000~3万7000ポンド)から、リー・フランシスの魅力的なウッディー(9000~1万1000ポンド)まで、見所満載だ。なかでも目玉の3台を紹介しよう。

特に注目なのが、1937年ベントレー3.5リッター・ヴァンデンプラ・ドロップヘッドクーペ(推定落札価格45万~55万ポンド)だ。新車からの走行距離はなんと1万5500マイル。"エンジェルのベントレー"と名付けられ、世界で最もオリジナルで保存状態のよいベントレーと謳われている。このシャシーナンバーB135FCの過去のオーナーは3人だけだ。新車で購入したのはスコットランドのロバート・ヘイワードで、第2のオーナーであるランドルフ・エンジェルは、この車に惚れ込むあまり、ほとんど使わずに保管していた。そのため1980~2013年まで走行していない。これを相続人が5年前に出品して3人目のオーナーの手に渡った。

これほどオリジナルではないが、次の1929年ベントレー4.5リッターは、ベントレーとゆかりの深いウルフ・バーナートの車だ。推定落札価格は75万~85万ポンド。ダイヤモンド鉱山を相続したバーナートは、ベントレーに資金を提供した救世主であり、ル・マンで3度優勝したエースである。このシャシーナンバーNX3457 は、バーナートが所有していた頃はヴァンデンプラによる4座のオープンボディだったが、1960年代に大々的なレストアを受け、その後、H&H コーチワークス(オークションハウスとは無関係)が手掛けたル・マン風ツアラーボディに変更された。

新たなオーナーが周囲の注目を浴びる点では、3台目の1966年ジャガーEタイプも同様だ。ただし、よい意味での注目かどうかは定かではない。アビー・パネル社のモディファイによって4灯になり、ボンネットにサメのエラ状のインテークが設けられている。新車で購入したのは第6代コードー伯爵で、第11代エルガン伯爵が造らせた同様の車にヒントを得てデザインされた。アビー・パネル社はこのスタイルで3台製造しており、ウィリアム・ライオンズ卿のお墨付きも得ていたという。最低落札価格の設定はなく、推定価格より上がるのか下がるのかは予測不可能だ。

編集翻訳:伊東和彦(Mobi-curators Labo.) Transcreation: Kazuhiko ITO (Mobi-curators Labo.) 原文翻訳:木下 恵 Translation: Megumi KINOSHITA

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