まるでハートを射止める矢のように輝く1台│世界に5台のシルバーアロー

RM Sotheby's herseys

RMサザビーズがハーシーで開催したオークションは、希少な車が目白押しだった。なかでも大きな注目を集めたのが、この1933年ピアスアロー・シルバーアローだ。流線型のボディも素晴らしいが、興味深いのがそのヒストリーである。

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現存わずか3台のシルバーアローの中でも、こ
れこそ最初に造られた1台なのだ。ニューヨークとボストンのオートショーでピアスアローのブースを飾り、曲線を描くルーフや、埋め込み式のドアハンドル、リアエンドを絞り込んだシルエットなどで、センセーションを巻き起こしたという。三角形のリアウィンドウは、最新のレンジローバー・イヴォークのものがひどく大きく思えるほど小さい。

フロントフェンダーの内部にはスペアタイヤが格納されている。また、シックなピンストライプのトリムや、アールデコの影響を受けたライト、ダッシュボードの計器盤も美しい。



デザインしたのはフィリップ・O・ライトで、26歳の若さながら、すでにコードL- 29スピードスターを手掛けていた。しかし、アバンギャルドなスタイリングは、アメリカ最高峰の高級車として名高いピアスアローを求めるような顧客が望むものではなく、シルバーアローの製造はわずか5台で終わった。

この製造第1 号の最初のオーナーは、"クレイジーウォーター"というテキサス産ミネラルウォーターをサンフランシスコで販売していた人物で、車に商品名をペイントして宣伝に利用した。その後、別のクレイジーウォーター販売業者の手に渡ったのちに、ハリウッドに小道具を提供していたジム・ブラッカーが入手して、自身が運営する博物館"ムービーワールド"に展示した。

1980年代には膨大なブラックホーク・コレクションの1台となり、これを20年ほど前に、著名コレクターのトーマス・デロが購入。デロはこの車をコンクールに出展して数多くの賞を獲得したが、2017年1月に91歳で亡くなった。

1933年のオートショーで披露されたときは、黄褐色のツートーンだったといわれているが、現在のシルバーに塗装されてからすでに数十年が経つ。塗色以外はオリジナルのままの素晴らしい状態で出品された。もちろん、誰もが思わず立ち止まらずにはいられない魅力も新車当時のままだ。

編集翻訳:伊東 和彦(Mobi-curators Labo.) Transcreation: Kazuhiko ITO( Mobi-curators Labo.) 原文翻訳:木下 恵 Translation: Megumi KINOSHITA

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