ブリキのカタツムリで旅するプロヴァンス

シトロエン2CV(Photography:Martyn Goddard)

プロヴァンスよりも美しい場所はフランスのどこにもない。この地を探索するなら2CVのほかに最適なパートナーはない。

私の手元にある1968年版のくたびれたフランスのガイドブックを捲ると、"景観、芸術、歴史的背景において、プロヴァンスほどに心動される土地はほかにはない"そうだ。ならば、歴史的な自動車に乗ってこの土地を探索することとしよう。私の愛車である1965年式のオースチン・ヒーレー3000ならば、ロンドンからはるばるフランス南東部まで文句も言わずに私たちを乗せてくれるだろうが、すぐに足を休めることとなるだろう…。

私たちが旅の途中で最初に車を停めたのは、リュベロン産地の麓にあるコミューンであるルールマランだった。だが、私の目の前に広がる光景は、私が思い描いていたプロヴァンスとは程遠いものだった。

昼食を終えてから少し走ると、ねじれのある峡谷、道の下を走るエギュ・ブラン川を通り、コル・デュ・ポワンチャの頂上に向かった。そこでセニョンの方向を向くと、まるで軍隊の整列のようにきれいに並んだラベンダーに囲まれていた。絵の具で塗ったかのような紫色の畑、青い空、そして、まさにぴったりのタイミングでシトロエン2CVを称える赤色。ルールマランの中心には近づいたが、正確には戻ってこられたというわけではなかった。私の愛車ヒーレーは代わりにマ・ド・ギーユホテルに停まり、近くのシャトー・フォンヴァート城からのバラの香りで、その疲れを癒したのだった。

翌日、私たちはD56号線を走り、ブドウ畑や中世の村の中を走っていた。プロヴァンスのベストセラー『プロヴァンスの贈り物』の著者、ピーター・メイルが気に行っている場所の近くも通った。

私たちの計画は、自分だけのドゥ・シュヴォ(青い1960年式がいい)を見つけることから始まった。多くの人がフランスの中で最も美しいと感じるアンスイ辺りの道で、最もフランスらしいこの車を満喫しようというプランを立てたのだ。

私たちに2CVを提供してくれたオーナーは、フォード・オブ・ヨーロッパ社の元デザインディレクター、マーティン・スミスだが、この日は彼が不在だったため、エンジンの始動方法とギアポジションは、正確とはいえない私の記憶に頼らざるを得なかった。まずはイグニッションキーを回し、チョークを引き、Dノブを引き、ガチャガチャとやって、ようやく425ccフラットツインが動き出した。

編集翻訳:伊東和彦(Mobi-curators Labo.) Transcreation:Kazuhiko ITO (Mobi-curators Labo.) 原文翻訳:BE-TWEEN(平野 Julia、Shawn Mori、東屋彦丸) Translation:BE-TWEEN (Julia HIRANO、Shawn MORI、Hicomaru AZUMAYA) Words and Photography:Martyn Goddard

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