ぶっ通しで4日間走り続ける過酷なヒストリックカー・ラリーに参加

Photography:Francesco Rastrelli, HERO



私は午後遅くランズエンドのランドマークでもある道標に行ってみると、有名なジョン・オグローツの道標までは“難行道”ではないことがわかってちょっとがっかりした。ランズエンドでは、今回私のコ・ドライバーを務めてくれるニック・クーパーに偶然会えたのは収穫だった。私たちにはやらなくてはいけないことが山ほどあることを教えてもらったからだ。

ニックは数多く用意される速度テストのインストラクションについても話してくれた。上限速度を守りつつも、できるだけ早くフィニッシュしたほうがよいとのこと。前年のイベントからとうてい理解できないインストラクションがダイヤグラムに含まれるようになり、私も何を言っているのかまったくわからないものばかりだったので、前もって調べておかないと大変なことになるというのだ。あれやこれや覚えることがいっぱいあって私の頭は大混乱、その晩もよく眠れなかった。まあ、慣れるしかないのだが。

翌日はなんと雪。BBCの天気予報もただごとではないことを伝えている。TV画面では英国全域が雪のマークで覆われており、警報さえ出ている。ラリーのルートもほとんどが大雪であることは間違いない。それでもニックは準備に余念がない。トリップメーターの精度を高めるために何度も走りにでかけ、タイマーや時計のチューニングに精を出す。そこへラリー本部から連絡が入る。「いまどこにいますか? 最終の案内は受け取りましたか?」

その案内には錚々たるヒストリック・ラリーカーの参加一覧が載っていた。ホテルのラウンジに行ってみると、世界各国から詰めかけた60人もの参加者であふれかえっており、どのテーブルにもルートのプロッティングや、レグの走り方などを記したマップが広げられていた。コース・チェックはニックに任せ、私は外へ出て身を切るような風の中、カーナンバー36の"マル2"のところに行った。工具類とスペア部品を並べ、タイヤ交換とドリンクシステムの交換をやってみた。

脱水症状にならないように念入りに。ほかに、凍結防止剤、雪
かき用ショベル2個、衣類の入ったバッグ、ウェットスーツ、ブーツなども確認し、スノーチェーンはすぐに取り出せる場所に置いた。どれも雪対策である。スコットランドはまだ雪が降り続いており、ウェールズではブリザードが吹きすさぶっているという。どうなるんだ、これから。

夜10時過ぎ、私はニックを外に連れ出し、近くでいちばん暗くて狭い場所を探した。大型スポットライトをテストするためである。ライトを車の外側に少し向けてみると、崖の淵の斜面と岩の区別はついたが、雪の中では遠くまで見通せない。コーンウォール岬は本当に真っ暗で、帰り道はそれこそ手探り状態だった。部屋に戻ったあとも風はますますうなりを上げ、雨が弾丸を撃ちまくるように降るなかで、私たちはふたたび眠れぬ夜を過ごしたのである。

編集翻訳:尾澤英彦 Transcreation:Hidehiko OZAWA Words:Tony Jardine 

無料メールマガジン登録   人気の記事や編集部おすすめ記事を配信         
登録することで、会員規約に同意したものとみなされます。

RECOMMENDEDおすすめの記事


RELATED関連する記事

RANKING人気の記事