ぶっ通しで4日間走り続ける過酷なヒストリックカー・ラリーに参加

Photography:Francesco Rastrelli, HERO



日曜の午前3時45分、私たちはチェスターにいた。ようやく何時間か眠りにつけそうだったが、興奮した頭はそう簡単に切り換えできそうにない。雪はなおも降り続いていたから、雪に埋まった車を掘り起こして出走できる状態にしておかなければならないし。

私たちはペンニン山脈を越え、ランカシャー州の大地を横切り、カービー・ロンズデイルに進路を取って、ヨークシャー・デイルに行かねばならない。そこは人里離れた辺鄙なところで、映画「嵐が丘」の寒々しいシーン撮りに使われた地だった。ひとつめのコントロールはドイツ人カメラマンと立ち往生したミニバスに邪魔されたが、911とともに縫うようにしてそこを逃れ、抜きつ抜かれつを楽しみながら丘の上まで昇った。

ここはトボガンぞりで滑るかのようなダウンヒル・セクショ
ンである。とにかく忍耐が勝負。自らの精神を鎮め、車がステアリングを切ってほしいのかドリフトを止めてほしいのか、内なる声をただひたすら待つ。

ホウズにあるサイモンストーン・ホールでは食事のための休憩があった。忌まわしいことにクラークソン氏がプロジューサーと口論していた。ここではイベントのお祝いをする場所でもあったのに気分が悪くなる。即刻移動することにした。もしウェールズのタイム・コントロールで私たちが最高得点を獲得していたら、次のレギュラリティー・ランとなるイングレトン〜リベルヘッド・ヴィアダクト間は恐ろしいことが起きるかもしれない。

そのセクションは山を片側から登り、
反対側に降りるというコース設定だが、勾配はかなり急。登れない車は何台もあったし、下りは頭から突っ込むような感じで走らなければならないからだ。下りの途中には氷がシート状になっている箇所があって、そこで左側に滑ると切り立った崖から落ちる危険もある。だからあくまでも慎重な運転が要求されるのだ。ブレーキは使わずに常に速度を抑えて走らねばならない。それでもコントロールはまったく効かない感じだが、完全にコントロールを失うまでに至った事例はない。

それまでのラリーで経験したことが役に立つのだが、何より
低めに設定されたアベレージスピードが、ヒストリックカーやヒストリックカーのラリーを安全なものにしてくれる。

私たちは月曜の明け方にスコットランドのペブルズに到着した。睡眠が不足していてよいことなど何もないが、コース事務局のガイ・ウッドコックとダン・ピジョンは、天候の悪化のためにルート変更やレギュラリティー・ランの短縮を強いられ、その対応に大わらわで土曜日から一睡もしていない。テイ湖を経由してローランド地方からハイランド地方まで走る区間では3つ以上のレギュラリティー・ランがあり、それを終えると得もいわれぬほどに美しいローモンド湖を通ってアヴィエモアに入る。火曜日午前1時50分に出発するまで数時間休んだ。そのあと数時間走って東海岸に出ると、これまでにないほどのコンペティション・セクションがいくつか用意されていて、そのひとつはアクスルまで埋まりそうな雪と強風の中で行われるという。

編集翻訳:尾澤英彦 Transcreation:Hidehiko OZAWA Words:Tony Jardine 

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