カーデザイン界の問題児3人が作り上げた3台の問題作

Photography:Max Serra Estratti



3台目のショーカーがイタルデザインの"イグアナ"だ。ベースとしたシャシーは105.33.750.35116で、1969年11月のトリノ・モーターショーで発表された。車高は3台の中で最も高い105cmだ。ジウジアーロは、現実離れした見せ物というショーカーの概念を越えて、すぐにでも市販できる車を造り上げた。

1970年代のウェッジシェイプを採用した点はカラボと同じだが、ジウジアーロはスチールによる耐荷重構造を付け加え、元のレーシングシャシーの強度を高めた。それを外から分かる形で残し、デザインの一部としたのである。S字を描くベルトラインがその好例で、低いノーズとテールのラインを見事に強調している。イグアナもガラスエリアが広く、コクピットは降り注ぐ光に包まれる。



3台のうち、エンジンを外から見える形で誇示しているのはピニンファリーナだけだ。バンク角90゜のアルファロメオV8が誇る美しさと斬新さを考えると少々解せない。だから、ピニンファリーナだけが現在もオリジナルのV8を搭載しているのかもしれない。他の2台は、スピカ製インジェクションを備えるアルファロメオ・モントリオールのエンジンなのだ。

FCAヘリテージ部門でアルファロメオ・クラシケコレクションを任されているステファノ・アガッツィは、次のように推測している。「コーチビルダーに提供されたシャシーがどのエンジンを備えていたのかは分かっていません。しかし、33と同じツインスパーク・インジェクションの2.0リッターV8だったことは容易に想像できます。確かなのは、現在はカラボもイグアナも、33ユニットから直接派生したモントリオールの2.6リッターエンジン、ティーポ564を搭載していることです」

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「時期は分かりませんが、おそらく同時に換装したのでしょ
う。エンジンナンバーがカラボは00564.0172で、イグアナは00564.0174だからです。アルファロメオでは何ひとつ無駄にしませんでした。レーシングカーに搭載したりスペアにしたりする必要がいつ生じるかも分からない貴重なレース用エンジンが2基、走らないショーカーに収まっている。宝の持ち腐れだとみなされたとしても、不思議ではありません」

33ストラダーレのシャシーは合わせて18台造られた。現在アルファロメオ歴史博物館に収蔵されているプロトタイプは、マラッツィで組み立てられた11台の標準仕様とはわずかに異なる。やはりアルファロメオ歴史博物館にある残りの6台は、ショーカー用としてカロッツェリアに提供された。つまり、製造台数の半数近くがワンオフなのである。しかも、スカリオーネによる標準のストラダーレ11台は、現在も史上最も美しい車との呼び声が高い。要するに、どれをとっても魅惑的であることに変わりはないのだ。

編集翻訳:伊東和彦(Mobi-curators Labo. ) Transcreation:Kazuhiko ITO(Mobi-curators Labo. ) 原文翻訳:木下 恵 Translation:Megumi KINOSHITA Words:Massimo Delbò 協力:ステファノ・アガッツィ(アルファロメオ歴史博物館)、ファビオ・マルラッキ(歴史家)

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