世界中から厳選されたクラシックカーが集まる最古のコンクールデレガンス

審査員ジャッジのBest of show授賞車 1958年フェラーリ 335 スポーツ・スパイダー・スカリエッティ。シルバーブルーのボディが、一際輝くオーラを放つ。(Photography : Shinichi EKKO、BMW Group Classic)

イタリア北部、コモ湖畔のヴィラデステは、年間を通じてエレガントな装いを楽しませてくれる特別な場所だ。ヒストリックカー・エンスージアストにとって、5月後半はここが特別な場所になる。世界最古のコンクールデレガンス、コンコルソ・デレガンツァ・ヴィラデステ(以下ヴィラデステ)が開催されるからだ。

すべての写真を見る

2018年のテーマは"ハリウッド・オン・ザ・レイク"。厳選された51台のクラシックカーとコンセプトカー、プロトタイプ部門の最新モデルが湖畔に並ぶ。土曜日はこのヴィラデステの庭園をこれら珠玉の名車が埋め尽くす。しかし、この場に集うことができるのは出展車関連の人々と、世界から招待された審査員、そしてメディア関係者である。つまり今や満員電車並みの混雑状況となった、コンクールデレガンスのもう一方の雄であるペブルビーチとは対極にあるエレガントな空間が広がる。しかし早い時期にエントリーすれば、ごく限られた一般チケットも確保することができるから、それを狙うという方法もある。

2018年のラインナップはバラエティに富み、とても魅力的だった。参加車両が会場へ運びこまれるのは金曜日だ。地を這うような赤い物体が、湖畔を歩く私の脇を走り去って行ったことに気づいた。なんとそれは、アルファ・ロメオ・ティーポ 33/2 ストラダーレだった。フランコ・スカリオーネの手による傑作は、21世紀においてもまったく古さを感じさせない。

その翌日のこと。会場に展示されるこの美神を楽しんでいると、私の横でマエストロ、ジョルジェット・ジウジアーロ御大までが真剣にそれを眺めているではないか。「素晴らしい美しさだ」とささやく御大と並んで眺めるとは、なんとも出来すぎのシーンだ。そんな素晴らしい偶然を二度も私に与えてくれたティーポ33は、土曜日の投票で決まる名誉あるコッパ・ドーロを獲得した。


1968年製アルファ・ロメオ 33/2 ストラダーレ・クーペ・スカリオーネ。鬼才フランコ・スカリオーネがデザインした「空飛ぶ円盤」。わずか2000ccのエンジンにも関わらず、最高速度は260km/hを発揮する。18台のみの製造。

"地を這うような"といえば、ランチア・ストラトス・ゼロも大きな注目を集めた一台だ。フロントのウインドスクリーンを開け、前面からフロント部分をまたいでコックピットへ入る姿にも感嘆の声があがる。1970年代初頭に皆が信じた自動車への無限の可能性を形にしたマルチェロ・ガンディーニの傑作だ。こちらもヴィラ・エルバにて16歳以下の人気投票でトップの座を獲得した。

エクスクルーシブな土曜に比べて、日曜のヴィラ・エルバでは、カジュアルに展示車両を楽しむことができる。こちらは誰でも入場券を購入することができるが、それほど安価ではないにも関わらず、入場には長蛇の列ができるほどの人気ぶりだ。当イベントを全面的にスポンサーするBMWのエポックメーキングなモデルや、世界のバイクも所狭しと並ぶ。そしてなにより熱心な子供たちが多いのにも驚く。美しい車へのあこがれを持ち続けてほしいと願い、微笑ましい気分になった私であった。


1970年製ランチア・ストラトス・"ゼロ"。16歳以下の人気投票1位を授賞したランチア・ストラトスのプロトタイプ、"ゼロ"。約50年前に生まれたとは信じがたい伝説の一台である。デザインはイタリアのカロッツェリア・ベルトーネによるもの。

文:越湖信一 Words:Shinichi EKKO 写真:越湖信一、BMW Group Classic Photography : Shinichi EKKO、BMW Group Classic

無料メールマガジン登録   人気の記事や編集部おすすめ記事を配信         
登録することで、会員規約に同意したものとみなされます。

RECOMMENDEDおすすめの記事


RELATED関連する記事

RANKING人気の記事