世界中から厳選されたクラシックカーが集まる最古のコンクールデレガンス

審査員ジャッジのBest of show授賞車 1958年フェラーリ 335 スポーツ・スパイダー・スカリエッティ。シルバーブルーのボディが、一際輝くオーラを放つ。(Photography : Shinichi EKKO、BMW Group Classic)



コンクールデレガンスは単に停まっている車を眺めるところではない。どんな古い車も、観客の前でキャット・ウォークを繰り広げてくれる。動く車は、静止しているそれとは違った、生き生きした美しさを見せてくれる。今回のヴィラデステでは、グランプリマシンのマセラティ250Fや6輪のティレルまでもがその美しい走りを競ったのだから驚きだ。また、N.A.R.Tカラーに彩られたフェラーリ335Sの荒々しいエグゾーストノートに"やられた"エンスージアストも多かったであろう。

335Sは、1957〜58年にかけて計4台がミッレミリアの制覇を目指して製作され、4023ccの4カムエンジンは390PSを発揮、最高速度は300km/hに達した。だが、そのデビュー戦たる1957年のミッレミリアにおいて、ドライバーであるデ・ポルターゴとコ・ドライバー、加えて観客14名が死亡するという悲惨な大事故が起きたのは読者もご存知のことだろう。この事故によってミッレミリアは中止に追い込まれ、大排気量モンスターマシンをヨーロッパのレースシーンから駆逐してしまった。

そのため、この長く美しいポンツーン・フェンダーを持ったマシンは北米へと安住の地を求め、デイトナ24時間レース等で大活躍した。そのマシンを完全復元したオーナーのアンドレアス・モーリンガーが、ヴィラデステへ持ち込んだわけだ。60年の年月を経て。ヴィラデステ審査委員長ロレンツォ・ラマチョッティはこうコメントした。「審査員達はこれこそがベスト・オブ・ショーに相応しいと、即決であった。その名誉を盛大に讃えるにふさわしい」と。


ヴィラデステの楽しみは車を眺めることだけではない。著名なコレクターや、名立たるデザイナーたちがあなたの横で真剣に車達を眺めている姿にも出くわす。常連であったトム・ジャーダ(2017年没)の姿を見ることはできないのは悲しいが、2018年は会場に一人のヒーローの姿を見つけた。「ここは自分の庭みたいなところさ。たくさんの思い出がある。写真を撮りたいだって?それは高いぞ」といって高らかに笑ったのは、あのエキサイティングなF1レーシング・チームのオーナーであったウォルター・ウルフだった。

2019年度は5月25日、26日に開催される。

文:越湖信一 Words:Shinichi EKKO 写真:越湖信一、BMW Group Classic Photography : Shinichi EKKO、BMW Group Classic

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