前人未到の記録をもつポルシェがル・マンの地へ戻る

Photo:PORSCHE AG

ル・マン24時間レースにおいて総合優勝通算16回。いまだに破られていない前人未到の記録をもつポルシェが最上位クラスLMP1に帰ってきた。その理由は、『栄光のル・マン』でスティーブ・マックイーンが語っている。そう、「レースこそわが人生」と。

この言葉をスローガンに、16年というブランクを経てポルシェがル・マンに帰ってきた。正確には最上位クラスであるLMP1にという意味である。現在GTE-Proクラスにも911RSRでエントリーしており、下位のカテゴリーなども含めれば、ポルシェはル・マン24時間レースに63年連続で出場している唯一のスポーツカーメーカーである。

ポルシェのル・マン初参戦は1951年。まだ356が登場したばかりの頃だ。スペシャルボディをまとった2台の356SLをル・マンへと送り込み、予選で1台を失ったものの、初参戦で総合20位、小排気量1100ccクラスでクラス優勝を成し遂げている。

多くの人にとってもっとも印象的なレースといえば1970年の917Kによる勝利だろう。あのスティーブ・マックイーン主演の映画『栄光のル・マン』によって物語化されており、今なお語り継がれることになる。

917Kは翌年にも続けて勝利し、ターボカーの時代になると936で76年、77年、81年のル・マンを制している。

1982年にスタートしたグループC規定でも、ポルシェは956、そして962Cで1982年から87年までル・マン6連勝、1981年の936を加えると7連勝という偉業を達成している。実はこのグループC時代には、エンジンの形式や排気量は無制限で1レースあたりの燃料消費量が定められた燃費競争という、現在のレースに通じるレギュレーションとなっていた。88年はシリーズではなく、ル・マンにのみ参戦するも優勝をジャガーにさらわれ、ポルシェのグループCカーは終焉を迎える。

1994年、ル・マンの最上位クラスはLMGT1規定に移行する。それをうけ96年にポルシェは911GT1で復帰、3年目の98年に見事優勝を果たし、前人未到の総合優勝16回を達成している。そして、以降、ポルシェの最上位クラスへの挑戦は途絶えていた。

現在のル・マンはFIA選手権の1つであるWEC(世界耐久選手権)シリーズの1戦に数えられるものだ。2012年に新たなシリーズとしてはじまったWECは、かつての世界プロトタイプスポーツカー選手権やスポーツカー選手権をルーツとする。

2011年、ポルシェ社内に長年遠ざかっていたのプロトタイプカーレース、WECへのワークス参戦プロジェクトが立ち上がる。BMWで1999年にル・マン総合優勝を果たし、F1でも中心的な役割を果たすなど30年にわたってレース活動に従事してきたフリッツ・エンツィンガーがポルシェAG LMP1プロジェクトのトップに就任。彼を司令塔にチームづくりがはじまる。生え抜きだけでなくF1チームなどからも優秀な人材を呼び込み、いまでは200人規模のチーム編成になっている。

WEC最大の特徴はパワーユニットに制限がないことだ。ガソリンでもディーゼルでもターボでも、メーカーは自社の得意とする分野で参戦が可能。最上位クラスのLMP1にはハイブリッドシステムが義務付けられたLMP1-Hと、ハイブリッドなしのLMP1-Lがある。(できるだけ性能差をなくすためHと比べて20kg軽い規定となっている)。

初年度の2012年にはトヨタとアウディが、そして今年からポルシェが参戦するのがこのLMP1-Hクラスだ。トヨタのTS040ハイブリッドが3.7リッターV8ガソリン+ハイブリッドなのに対し、アウディのR18 e-tronクワトロは4リッターV6ディーゼルターボ+ハイブリッド。そしてポルシェはいまどきのダウンサイジング、2リッターV4ガソリンツインターボエンジン+ハイブリッドを組み合わせた、"ポルシェ919ハイブリッド" を投入している。この排気量も性能もバラバラな各車は、タンク容量(ガソリン:68.3リッター、ディーゼル:54.2リッター)と流量によって性能調整がされており、3車が均衡を保っている。昨年までやや有利といわれていたディーゼルエンジンへの規制が変更されたことで今シーズンはより拮抗したレース展開をみせている。



今シーズンのポルシェは14号車と20号車の2台体制で参戦。20号車はレッドブルF1チームからの加入で注目されたマーク・ウェバーを筆頭に、ル・マンでの優勝経験をもつティモ・ベルンハルト、若干25歳のブレンドン・ハートレーというトリオとなっている。

ポルシェといえども最新の複雑かつ繊細な最上位クラスで勝利することは容易ではない。復帰1年目となるシーズンは第2戦スパでなんとか4位に入るも、トップ争いをするまでには至っていない。

文:藤野太一 Words:Taichi FUJINO

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