グランドキャニオンをメルセデス・ベンツ 300SL ガルウィングで旅する

Photography:Patrick Ernzen



現在ドンが所有している300SLは、1956年6月に新車の状態でフィリップ・リヒトマンの父親のもとに届けられた。当時、ティーンエイジャーだったフィリップは、自ら設計して造り上げた望遠鏡をナショナル・サイエンス・フェアに出品し、優勝を収めたこともあり、その後はハーバード大学に進学した。彼は人生の大半をコンサルタントとして過ごし、関わった分野はロボット工学の試作品、銃火器、機械装置、冶金学、水力学、空気圧工学、外科用器具類など多岐にわたる。趣味も多彩で、釣り、模型飛行機、昆虫学、オリエンタル・ラグのレストアなどに情熱を傾けていた。

リヒトマンがハーバード大学を中退後に最初に手がけたビジネスは、彼がコンペティション・アソシエーツ社と名付けた会社の立ち上げだった。この会社は、米国製以外の産のスポーツカーやGTを扱い、後には望遠鏡の製作も行った。彼がこの会社を立ち上げたきっかけとなったのは、例の300SLガルウィングでクラブ・レースのイベントに参加した経験だったという。

このガルウィングは1956年(リヒトマンは19歳)から、65年までレースに参戦した。この車をレース歴全体を通して堅牢な状態に調整するために、リヒトマンは自身の想像力、スキル、才能あるワーキング・チームを傾けたという。車は1985年まで路上でも使われていた。その後、2017年にリヒトマンが亡くなるまで、車は彼のガレージで保管されていた。

2018年の初めに、ドンがこのメルセデスをリヒトマン一家から購入した際には、生前のリヒトマンが手がけたモディファイがそのまま残されていた。具体的には、240bhpにパワーアップするために組み込まれたスポーツカムシャフト、後の300SLロードスターの備えられたフロント・ディスクブレーキ、ローギアードな4.11:1のファイナルなどだ。さらに排気系にも手が入りサイレンサーをバイパスする、見事な工作のカットアウトパイプも備えられていた。また、ギアボックスは、コルベット製のレース用アルミケーシングの4段クロースレシオ型に換装されていた。

リヒトマンはバンパーを外してロールバーを取り付け、仕上げに、メルセデス・ベンツのバルクヘッドやボディタグを模したコンペティション・アソシエーツ社製のIDタグを装着していた。また、彼はこのガルウィングで、ヒルクライム、ジムカーナ、サーキットレースなど、50以上のイベントに参加していた。1963年までには走行距離は20万kmを突破し、メルセデス・ベンツのファクトリーから記念のバッジを贈られている。

編集翻訳:伊東和彦(Mobi-curators Labo. ) Transcreation:Kazuhiko ITO (Mobi-curators Labo.) 原文翻訳:フルパッケージ Translation:Full Package Words:Donald Osborne

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