ドイツで最も有名な両親の隠し子?│ポルシェ 914 6気筒のパワーを探る

Photography:Andy Morgan



注目を集めながら914プロジェクトが進んでいた最中に、ポルシェにとっての不幸が立て続けに起こった。ノルトホフが1968年4月に心臓麻痺で死去したのである。ノルトホフもフェリーも古いタイプの自動車人であり、言葉と握手でビジネスを進めるタイプだったが、ノルトホフの後を引き継いだカール・ロッツは自動車界の外から来た違う人種であり、914の価値を本心から認めてもいなかった。ロッツはそれまでのコスト計算をひっくり返してしまったのだ。

914 のボディはカルマンで生産されたが、ロッツの計算に従うとポルシェは914のボディに911よりも高い料金を支払うことになった。安いはずのポルシェはもうそれほど安いとは言えなくなったのである。

914の存在意義はVWの方針によってさらに迷走する。つまり、米国向けの車は4気筒も6気筒もすべてポルシェとして新しいポルシェ-アウディ・ネットワークで販売され、いっぽうヨーロッパ向けはVWポルシェとして販売されるが、どちらの車もノーズにポルシェのエンブレムは付かないという。アメリカ仕様はエンジングリルにポルシェのロゴが備わっていたが、欧州向けはそうではなかった。これでは混乱しないわけがない。ハンドリングは誰もが認めるほど素晴らしかったが、多くのアメリカのユーザーはパワーのない4気筒"ポルシェ"にがっかりしたのである。

新しい914の機械的な成り立ちは、ポルシェ911とVW411をミックスしたものと言っていい。フロントサスペンションとラック・ピニオン・ステアリングは911そのもの、ただしエンジンをミドシップするためにホイールベースを延長しただけでなく、ポルシェのロードモデルとしては初めて角断面のトレーリングアームと同軸のコイル・ダンパーユニットを採用していた。

"エントリーレベル" に抑えるためにエンジンは411用燃料噴射式1.7リッターユニット、914/6では最も廉価なウェバー付き911T用2リッター・110bhpエンジンを積むことになった。ギアボックスは911用の5速を流用し、180°向きを変えて搭載、もちろんデフのリングギアも反対側に移された。

914/6のシャシーがもっとパワフルなエンジンにも対応できることは明らかで、そうやって作られた最初の2台のスペシャルは本物のモンスターだった。1台はフェリーの60歳の誕生日のプレゼントとして作られたもの、もう1台はチーフエンジニアだったフェルディナンド・ピエヒ自身の車である。どちらも908用の3リッターフラットエイト・レーシングユニットを搭載、フェリーの車は260bhpにデチューンされていたが、ピエヒ車は300bhpのホットロッドだった。この914/8が、914/6が強力なマシーンとなり得ることを証明したのである。

グループ3GTカテゴリーではホイールアーチを5㎝広げることが認められたため、ポルシェはそれを最大限に活かして、6または7インチのフックス製ホイールが収まるように四角いスチール製フェンダーを溶接した。見た目のことを考えたものではなかったが、それによって獰猛な闘犬のような914/6GTが生まれたのである。

編集翻訳:高平 高輝 Transcreation:Koki TAKAHIRA Words:Delwyn Mallett

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