天賦の才能を持つ牧師のアート│クラシックアストンマーティンを描く

Illustrations:Adam Gompertz

アダム・ゴンパーツ牧師は元カーデザイナーで、イラストレーションにかけては天賦の才能を持つ。そのインスピレーションの源はクラシック・アストンだ。

「小さい頃はなんでも描きましたが、4歳か5歳くらいから車ばかり描くようになりました。両親は少し失望していたんじゃないかと思います。二人とも芸術家肌だったので、よく家族でスケッチに出掛けたのですが、風景を描く両親を横目に、私は駐車場へ行って、そこでスケッチを始めたんですから⋯」

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こう話すアダム・ゴンパーツ牧師は、生まれついてのアーティストでエンスージアストだ。コヴェントリー大学の世界的に有名なカーデザイン課程を修了し、車とヨットのデザイナーとして働いた経験を持つ。そして、ここで紹介しているペンとパステルを駆使した美しいイラストレーションの作者でもある。

ゴンパーツのフェイスブックページは「REVSアート」という。"rev"はエンジン回転という意味のほかに牧師の略称としても使われるから、これが掛けことばなのはすぐに分かる。分からないのは、英国国教会の牧師補と、余暇に好んで車を描くこととの関係だ。神に仕える仕事と、神から授かったイラストレーションの才能。ありそうもない取り合わせだが、43歳のゴンパーツの中では矛盾なく両立しているらしい。一見まったく異なるが、どちらも重要な原動力なのだとゴンパーツは語る。



「首に白いプラスチックのカラーを付けると、人はなんらかの反応を示します。もちろん、私を避けるために道を渡って反対側へ行ってしまう人もいますが、私に心を許して、他の誰にも打ち明けないようなことを話してくれる人もいます。クラシックカーを共通の話題にすれば、普段は教会と縁のない人たちとも知り合えるんですよ」

「 最初に赴任した教会は、リッチフィールドの近くにありました。裕福な地域だと分かると、私はすぐに『きっと格好いい車があるぞ。ぜひカーショーをやらなければ』と思いました。教区を取り仕切る牧師に相談したら、勇敢にもその突飛なアイディアを進めてよいと言ってくれたのです。素晴らしいクラシックカーを持っている信者がいて助かりました。でも、同僚からはマトモじゃないと思われていたでしょうね」

「ともかくもショーは開催され、28台の車が集まりました。ブガ
ッティ・タイプ35に、いろいろなアストンやフェラーリ、それにピカピカのヒルマン・アヴェンジャー・エステートなんてのもありました。素晴らしい一日でしたよ。人々に教会はオープンだと分かってもらい、『私たちは地域に尽力し、皆さんの情熱を共有します』というメッセージを伝えられたと思います。面白いことに、元カーデザイナーという私の肩書きが役に立ったようです。神を熱烈に信奉しながら、同時に車にも情熱を燃やす人間がいるわけですから。ふたつが相反しないという証明になったわけです。これがREVSプロジェクトを始めるきっかけになりました。クラシックカーへの愛情を共通の土台にして、信仰心のある人と少しある人とまったくない人とを結びつける試みです。その自然な発展形がREVSアートなんですよ」

大半のエンスージアストと同じように、ゴンパーツにとっても好きなメーカーはひとつではない。しかし、子どもの頃に最も強烈な印象を受けたのがアストンマーティンだった。地理的環境と人との巡り会いによって、思春期を過ぎて大人になっても消えることのない大きな影響を受けたのだ。今も特別な絆を感じるという。

編集翻訳:伊東 和彦(Mobi-curators Labo.)  Transcreation:Kazuhiko ITO(Mobi-curators Labo.) 原文翻訳:木下 恵 Translation:Megumi KINOSHITA Words:Richard Meaden 

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