BMW CSL バットモービル vs ポルシェ911 カレラ 2.7 RS│ホモロゲ仕様の対決!

Photography:Paul Harmer

カレラ2.7 RSの好敵手といえば、BMW CSL"バットモービル"以外に最適な選択肢はないだろう。2台の素晴らしいスペシャル・ホモロゲーション仕様を最高の舞台であるスパ・フランコルシャンに持ち込んだ。

雨が激しく降り始めた。スパ・フランコルシ
ャン・サーキットに黒い雲が押し寄せ、曲がりくねってキラリと光る灰色の舗装道路がベルギーの森を縫うように急降下していった。雨は横向きに叩きつけるように激しさを増した。これこそまさしく"スパウェザー"だ。

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これに先立って、私たちは1973 年BMWCSL"バットモービル"の取材計画を練っていった。CSLのオーナーであるフィリップ・カンターは、スパ・フランコルシャンこそツーリングカー選手権のために設計されたバットモービルにとってのホームグラウンドであると断言した。事実、1974年、75年、76年にはCSLが優位を占めていた。これで場所は決まった。次にCSLと一緒に走らせる候補のリストアップに入り、1973年ポルシェ911カレラ2.7 RSを選び出した。

だが、911に決まるまでには、フォード・カプリRS3100 も候補に挙がっていた。ETC(European Touring Car Championship)で最終的にCSLに勝ったのがカプリRS3100だったからだ。しかし、カンターは最近このCSLを駆ってツアーオート・フランスに出場し、多くのポルシェ911と対戦している。昨今のヒストリックカーラリーとレースの世界では、1970年代の車が大流行中であり、私たちはこのCSLがベンチマークマシンのポルシェ911カレラ2.7RSにどこまで迫るのかを見るのは面白いだろうと考えた。そして今、スパで雨に打たれているというわけだ。

1970年代初頭のETCシリーズでは、フォードがBMWに大差をつけて勝利している。1971年にはBMWが本気で取り組むことを決定し、BMW CSクーペから派生したスペシャル・ホモロゲーション・スペシャルのBMW CSL(クーペ・スポーツ・ライトウェイト)を発表した。それにはドラスティックな軽量化が要求された。モノコックはより薄い板厚のスティールで造られ、ドアパネル、ボンネット、トランクリッドはアルミ製になった。パワーステアリング、電動ウィンドウ、分厚いカーペット、心地よいシート、防音材といった、ラグジュアリーな装備は情け容赦なく取り除かれた。フロントバンパーは外され、リアバンパーはFRP製となった。この結果、実に250㎏の軽量化が図られた。



さらにヨッヘン・ニアパッシュやマーティン・ブラウンガートらの有能なエンジニア達の努力もあった。彼らはフォードの有能なスタッフであったが、BMWは1972年に彼らを自らの陣営に引き入れるという賢明な行為に出た。二人は、その後に大きな成功を収めることになるBMW Motorsport GmbH設立のための触媒となった。

エンジニアたちは、サイズの大きなクーペの空気抵抗とリフトを減らすことを目標とした。既に軽量化されたCSLは、"バットモービル仕様"というフル装備が盛り込まれた。フロントの深いエアダム、フロントフェンダー上の目立つエアガイド(フィン)、ルーフにマウントされたディフレクター、そして巨大なリアウィングが追加された。当時のドイツでは、これらのスのETCでBMWはカプリに勝った。このシーズンはツーリングカー選手権における語り草
になっている。 

編集翻訳:伊東 和彦(Mobi-curators Labo.) Transcreation:Kazuhiko ITO (Mobi-curators Labo.) 原文翻訳:東屋 彦丸 Translation:Hicomaru AZUMAYA Words:Robert Coucher 

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