ビビッドで潜在意識を心地よく刺激してくる車?!│ポルシェ911 2.8 RSRをドライブ

Photography: Gus Gregory


 
私は過去に2.7 RSRの経験もあるが、2.8RSRではすべてがさらに向上している。太いタイヤによるリアのグリップ、ハンドリングなども弟分に引けを取らず、なにより2.8リッターエンジンにより力強い走りを楽しむことができる。8000rpmで308bhpを発揮するRSRの騒々しいエンジンサウンドはぜひ皆に聞いてほしいと思う。それは爆発を思わせる音量だ。スティーブ・マックイーンの『栄光のル・マン』のDVDで、彼がポルシェ917で爆走しているシーンをステレオサラウンドで聞いてみるのもいい。
 
900kgを切るその車体で、RSRの加速力は現代の車と比べても素晴らしい。BMW M3や996カレラとも張り合える気がする。ただし、燃料噴射式は現代のように電子制御機構を備えないため、低回転域ではスロットルペダルを踏み込みすぎるともたつくことがある。だが、上手にスタートさえすれば、立ち上がりのノイズが3000rpmまで続いた後、稲妻のような低音がどこまでも伸びていく。現代の車では"車にまかせっきり"になるが、RSRではエンジンの許容範囲を理解し、回転、ギア、そしてスピードなどがすべてドライバーの管理下に入る。RSRの機嫌を取りながら走らせるとき、車への愛着も強まる。


 
ヒストリックカーに共通の弱点とも言えるのがブレーキだが、RSRでも例外ではない。917用に開発されたベンテッド・ディスクブレーキは1970年代では画期的とされたが、現代の基準からすればディスクの径は小さい。およそ300km/hもの速度で走るル・マンをこのブレーキでどうやって耐えたのかは想像し難いが、それでもストックよりも安心できたことは間違いない。最新のGT3のカーボンディスクブレーキには及ばないものの、実際には、充分な性能を備えていたことに安堵した。ブレーキペダルの初期のタッチは予想外に重いが、コーナーの手前でしっかりと減速してくれる。フィードバックも充分にあるので、慣れてくれば、コーナーを攻め立てることもできるようになる。
 
また、公道で車を走らせることができたのは、私の人生の大きな喜びの瞬間でもあった。夜のル・マン、270km/hでミュルザンヌ・ストレートを駆け抜け、タルガ・フローリオで10位内の成績を収めたことを想像するだけで武者震いする。これぞ、典型的なロードゴーイングレーサーだ。

編集翻訳:伊東 和彦(Mobi-curators Labo.) Transcreation: Kazuhiko ITO (Mobi-curators Labo.) 原文翻訳:数賀山まり Translation: Mari SUGAYAMA Words: Richard Meaden 

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