砂漠を制覇したポルシェ ダカール959を公道で運転する!?

Photography:Malcolm Griffiths & McKlein

砂漠を制覇したポルシェのパリ-ダカール仕様959。それを、公道で走らせてみたらどんな感じなのだろうか。

こんなに奇妙な想いをしたのは、いつ以来のことだろう。私は小雨の中、バンブリーの街の中心にある白馬に乗った貴婦人の銅像の横に立っている。数メートル離れたところに見えるのは、ポルシェ959、しかも本物のパリダカ出場車だ。
 
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誰にでも、頭の中に忘れられない映像があるものだ。私にとっては、1枚の写真がそれに当たる。それはこのとてつもない迫力のポルシェが、切り立った赤い大地を、砂を蹴立てて力強く進む姿。私は初めてこのラリーカーの写真を見たとき、こう思ったのを覚えている。「なんて無茶苦茶なことをするんだ。こいつはスポーツカーじゃないか」
 
中身は911ベースであることは一目でわかったものの、その959はまるで竹馬に乗っているように車高が高く、しかもふっくらとしたフェンダーのおかげでボディワークはあまりにも幅広く、とにかく違和感のある姿だった。それと同時に、単にラフな大地を「生き抜く」ためだけでなく、それに「勝利する」ために設計された車だということが強く伝わってきた。果たしてこの959は、1986年のパリ-ダカール・ラリーで、見事に1-2フィニッシュという強烈な結果をポルシェに残したのである。
 
優勝したレネ・メッジ/ドミニク・ルモイヌ組のマシンのドアには、この車と同様、カーナンバーの186が入っていた。ただし外観はほぼ同じだが、ここにあるのは、その1年前、959のデビューイヤーにメッジが運転したほうのマシンである。
 
ダカール959は、世界に6台しか存在せず、個人で所有されているものはこの1台しかない。そんな貴重なマシンを、なんとこんな雨の木曜日に、しかも小さな田舎町でこの私に運転するチャンスが巡って来ようとは、とても信じられないことである。この驚きを表現することは難しい。日常的な光景の中に、よく見たら、まったく非現実的な化物が紛れていた、まるでそんな感じであった。



 
この車は、隣村のワーディントンで、ポルシェエキスパートとして名高いフランシス・タティルが管理している。私たちがその作業場に着いたときには、車はすでにガレージの外で待ってくれており、薄暗く陰気な1月の空気の中で、うっすらと輝いているように見えた。車高はとても高く、ごつごつしたダンロップタイヤを履いて、ガレージのドアほどもある巨大な泥よけを付けている。一見では小さく見えるものの、力がみなぎり、準備万端といった風情だ。

私は、ダカール959の実物を見たことがなかったので、あの有名な車にこれほど近づけるだけで光栄に感じ、自分がこれから運転するということがにわかに信じがたいものだった。だが、実際そのとき、私たちは運転することが叶わない状況に陥っていたのだ。他の書類はすべて揃っていたのだが、車検証だけが見つからず、それがなければこちらの用意した保険が適用されないのだ。
 
リチャード・タティル氏が何か方法がないかと考えてくれている間に、私たちは細部の写真を撮ってまわった。959の外部パネルは、ほとんどが複合素材だ。場所によっては、ペイントやステッカーの下にカーボン-ケブラーの質感を見て取れる。ロスマンズのカラーリングは、ところどころ砂で削られているが、それ以外はきれいに磨き上げられていた。

編集翻訳:堀江 史朗 Transcreation:Shiro HORIE 原文翻訳:木下 恵 Translation:Megumi KINOSHITA Words:John Barker 

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