アストン史上、最高傑作のひとつでイタリアを旅する1週間

Photography:Matthew Howell & Stephen Archer

イギリスからイタリアのコモ湖往復の道のりは、4カ国を横断し、走行距離2300マイルを超える。それはアストンマーティンが誇る究極のグランドツアラー、ヴァンキッシュSヴォランテのためにあるようなものだ。

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自動車評論家という職業がら、様々な車に乗る機会を与えられる。一般的には数時間、じっくり乗っても数百マイルといった具合だ。そういう意味では、初デートでお茶や食事をするようなものだ。しかし今回、イギリスからイタリアのコモ湖までの往復を試乗できる機会に恵まれた。これは筆者にとって初めての"デート"相手でありながら、いきなり密な(蜜な?)時間を過ごすなど、まるで真剣交際だ。1週間、共に過ごすデート相手は果たして運命の車なのか、それとも試練になるのか。

この言葉を謳う車はいくつかあれど、いざ長距離を走ってみるとドライバーが、あるいは助手席に座るパッセンジャーが、もしくは両者が失望してしまうものもある。シート形状から苦痛を味わうこともあれば、排気音の共鳴を長時間味わって疲れてしまうこともある。失望する理由は様々あるだろうが、一日のドライブを終えて車から降りることが待ち遠しくなるコンチネンタルツアラーが存在することは否めない。


 
ヴァンキッシュSヴォランテは、「コンチネンタルツアラー」に分類される車であり、スペックを見るかぎり長距離移動にはうってつけな相棒だ。以前、クーペであるヴァンキッシュSを試乗した際、その走りに魅了されたばかりだ。ヴォランテはもはや絶滅危惧種とさえ呼べる、最高出力595bhpを叩き出す自然吸気V12 エンジンにオープントップというグラマラスな要素が加えられている。
 
ヴァンキッシュSが1739 ㎏という車重なのに対し、ボディ補強がみっちり施されているヴァンキッシュSヴォランテは1919kgという巨漢ぶりだ。0-60mph 加速(ヴァンキッシュSが3.4 秒、ヴォランテ3.6 秒)、最高速度(ヴァンキッシュSが201mph、ヴォランテ197mph )ともにオープンモデルは若干劣るが、それでも速い部類に入る。
 
大陸横断の旅に出る前日、筆者の手元にヴァンキッシュSヴォランテが到着した。車に慣れておくため(という理由で)、短時間運転してみたが、この車を知るにはじっくり走らせてみる必要があると感じた。コモ湖までの往復ドライブは、ヴァンキッシュSヴォランテが底に秘めたものを探る旅になりそうだ。

アストンマーティン史上、最も色気を放つ一台であろう"新しい"ヴァンキッシュが登場したのは、2012年のことだった。奇しくも、デビューした地は、今回の目的地であるコモ湖にあるヴィラ・デステであった。ヴァンキッシュはただ美しいだけの車ではなかった。チーフエンジニア、マット・ベッカーが目指したものはアジリティ、レスポンスの向上、そしてアンダーステアの低減だった。そうしたヴァンキッシュの究極形がヴァンキッシュS だった。スプリングレートは10%引き上げられ、ビルシュタイン製ダンパーのソフトウェアも見直されている。特にリアのスタビライザー変更は、効果てきめん。空力特性にも手が加えられ、フロントスポイラーの改良によって、フロントのリフト量は38㎏低減している。

編集翻訳:古賀 貴司(自動車王国) Transcreation:Takashi KOGA(carkingdom) Words:Stephen Archer 

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