レーシングモデルにインスパイアされて誕生したGT8 ヴァンテージのパフォーマンスは?

Photography:Andy Morgan

GTカテゴリーを走るレーシング・ヴァンテージにインスパイアされて誕生したGT8は、間違いなくV8ヴァンテージのひとつの究極的進化形だ。その走りのパフォーマンスは、いったいどれほどのものなのだろうか。

ステアリングを握るたびに必ずアドレナリンやドーパミンが溢れ出す車というのは、ドライビングを愛するエンスージアスティックな男と女にとってのある種の理想形である。その筆頭といえるのは、レーシングカー由来のスポーツカーだろう。ワイルドな車に目のない者にとって、攻撃性をみなぎらせた獰猛なロードゴーイングレーサーほど心惹かれるものはない。
 
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このジャンルにおけるアストンマーティンの歴史は古い。できばえのよさと人気でトップに君臨するのは、いまだにDB4 GTとそのザガート仕様だという声すらあるほどだ。とはいえ、ご存知のとおりアストンマーティンは、近年も量産シリーズを進化させて走りを磨き抜いたモデルをいくつも生み出してきている。V8ヴァンテージだけ見ても、2007年のN400、2010年のN420、2014年のN430などがあり、そそられた覚えのある人も多いのではないだろうか。



これらのモデルにはニュルブルクリンク24時間レースや、より量産車に近いGT4カテゴリーのレースでの経験がしっかりと生かされている。ただしアストンマーティンは、ポルシェが911 GT3をラインナップのトップに置くようなやり方はせず、基本的には限定生産の"スペシャル" と位置づけてきた。ヴァンテージがV8ユニットを搭載してデビューしてから10年以上の時間が経ったとはいえ、アストンマーティンレーシング(AMR)は世界耐久選手権にV8を積んだヴァンテージGTEで参戦して結果も出しているのだから、そのレシピを生かした究極的な"スペシャル" を造り出すことは当然の、そして歓迎すべき出来事といえる。GT12改=GT8、ではない
 
GT8と名付けられた"スペシャル" ヴァンテージのネーミングとその姿から、2015 年に100 台限定で造られたヴァンテージGT12を連想するのは自然なことだろうと思う。そのV8版に違いないと考えることも。
 
それは、正しいといえば確かに正しい。GT12は2015年までGTレースを戦っていたV12搭載のヴァンテージGT3から、GT8は2016年に投入されたV8搭載のヴァンテージGTEからのインスパイアを受けて開発されたロードゴーイングレーサーだ。エアロダイナミクスの煮詰め方も軽量化の手法も同じベクトルの上にあるようだし、プロダクションモデルのエンジンにチューンナップを加えてパワーを引き上げているところも同じである。その出で立ちも、パッと見るだけではよほどのエンスージアストでもない限り区別がつかないほどよく似ている。
 
けれど、ディテールや仕様書を細かく観察していくと、アストンマーティンがGT12のエンジンをV8にすげ替えて別のモデルをでっち上げるような安易な真似をしてないことがよく解る。たとえば、フロント1590mm、リア1626mmという前後のトレッドだ。この数値は、フロントがスタンダードなV8ヴァンテージより20mm、GT12より5mm広くなり、リアが同じくV8ヴァンテージより36mm、GT12より43mm拡大されていることを示している。4本のタイヤのレイアウトを含め、シャシーに徹底した見直しが図られていることは明白だ。エアロダイナミクスに関するパーツ類も同様だ。一部はオプションとはいえ、フロントのスポイラーもスプリッターも、リアのウイングもディフューザーも、サイドスカートも、デザインはGT12のそれとも異なり、すべて新しい。前後のフェンダーの形状も、GT8のためだけにデザインしなおされている。

GT12が100台のみだったようにGT8も150台の限定生産で、価格は16万5000ポンドからと決して安くはないが、たった150台のためだけに膨大な開発作業が行われたことを考えれば、その価格にも納得がいくというものだ。

編集翻訳:嶋田智之 Transcreation:Tomoyuki SHIMADA 原文翻訳:木下 恵 Translation:Megumi KINOSHITA Words:Richard Meaden 

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