8台のポルシェ911とともにその半世紀におよぶ歴史を振り返る旅

Photography:Andy Morgan


 
モデルチェンジが実施された直後に旧型に乗ると、往々にしてその欠点が目立ってしまうものである。けれども、997カレラの最大のポイントは、たとえどんな基準で評価しようと、いまも特別な車としての輝きを失っていない点にある。
 
991の印象が明瞭なうちに997に乗り換えると、いくつもの興味深い発見がある。最初は、991の強烈なグリップレベルや鋭いターンインが恋しく思えるかもしれない。また、インテリアのクォリティ感や、新しい3.4リッターエンジンがもたらす生き生きとしたフィーリングという面でも991に軍配が上がる。
 
けれども、997のステアリングは991よりも能弁で、あらゆる情報を細大漏らさず伝えてくれる。シフトレバーの動きも、こちらのほうが滑らかで正確だし、操っている実感を得るのも997のほうが容易。321bhpを発する3.6リッターエンジンは味わい豊かで、しゃにむに走らずとも十分なパワーを発揮してくれる。エンジン・サウンドは3.4リッターのほうが魅力的だが、3.6リッターだって悪くはない。 

993以前の世代には比べるまでもないが、997は991よりも明らかにコンパクトに感じられるほか、車との一体感が強いこともあって、たとえメカニカル・グリップの限界を超えたとしても1インチ単位で走行ラインをコントロールできる。ハンドリングコースでは、ほんのわずかにスロットル・ペダルを浮かせるだけで、ターンインで必要となる荷重移動を終えられた。大したものだ。
 
グリップやトラクションを失わせるのに野獣のごとく乱暴な操作をする必要もない。つまり、ごく自然な動作をするだけで997をスライドさせることができるのだ。その際のコーナリングスピードが991ほど高くないとはいえ、997だって十分以上に速いし、コントロールする余地が多く残されている点も好ましい。つまり、車と一体化している感覚を、997は991よりも強く感じさせてくれるのである。

編集翻訳:大谷 達也  Transcreation: Tatsuya OTANI Words:John Simister 

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