勝負の分かれ目│小さな勝利を車全体で積み重ねていく

Photography: Aston Martin

2018年にデビューを飾ったロードカーと並行して開発されたレーシングカー、新型ヴァンテージGTE。AMRのテクニカル・ディレクター、ダン・セイヤーズに話を聞いた。

変化の速いこの時代にあって、モータースポーツにおける6年間は途方もなく長い時間だ。にもかかわらず、アストンマーティン・レーシング(AMR)のV8ヴァンテージGTEは、その長い期間を耐久レースの最高峰で戦い、勝利を重ねてきた。

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当初はスロースタートで、初優勝はデビューシーズンの最終戦になってしまったが、その後はWEC(世界耐久選手権)で史上最高の成功を収めるまでに成長した。優勝は38回にも上り(うちル・マンではLM-GTEのPro、Am両クラスで優勝)、選手権制覇は6度を数える。
 
ベースとなったロードカーバージョンと同様に、ヴァンテージGTEも素晴らしい形で年を重ねてきた。なにしろ、もっと若いライバルを相手にいまだに勝利を重ねているのだ。2017年も、バーレーンで開催されたWECのシーズン最終戦で、ジェントルマン・ドライバーのポール・ダラ・ラナとプロドライバーのペドロ・ラミー、マティアス・ラウダの組がGTE Amクラスのチャンピオンに輝いた。



GTE Amクラスでは現行のマシンをもう1シーズン使用するが、トップレベルのGTE Proクラスでは、AMRが誇るまったく新しいヴァンテージGTEに交代する。私たちはプロジェクトを指揮するAMRのダン・セイヤーズから新車の開発状況について聞くことができた。セイヤーズは新車のテストでセブリングに発つ直前で、言葉にも情熱が満ちあふれていた。

「この新車の製作過程は、非常に新鮮で、信じられないほど満足できるものになりました。普通なら好きなようにアップデートすることなどできないのですが、今回私たちは白紙の状態からスタートしました。アストンマーティンも深く関与しています。特にボディシェルがそうで、ロードカーのプロトタイプが完成すると、製造ラインから私たちの手元に最初のタブが届きました。これが助けになって、質量対剛性や重心といった面で大きく進歩しました。あらゆるものをできる限り低くし、細かな点まで比較にならないほど徹底した注意を払っています」
 
新ヴァンテージGTEはまったく新しい車だ。セイヤーズによれば、引き継いだコンポーネントは片手で数えられる程度だという。ドライバーのダレン・ターナー自身もそのコンポーネントのひとつ"だとか。AMR創設時から所属するターナーは、チームにとって不可欠の存在だから、パーツナンバーが付いていても不思議ではない。ほかにも経験・実績ともに豊富なドライバーが残留した。ターナーと共にル・マンのGTE Proクラスを制したジョニー・アダムに、2016年GTE Proクラスチャンピオンのニッキ・ティームとマルコ・ソレンセン。

編集翻訳:伊東和彦(Mobi-curators Labo.) Transcreation: Kazuhiko ITO (Mobi-curators Labo.) 原文翻訳:木下 恵 Translation: Megumi KINOSHITA Words: Richard Meaden 

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