ポルシェ911の理想的な運転の仕方とは?

Photographs: John Colley, Porsche archives, Paul Harmer, Rex Features

素晴らしい状態の911を思い切り走らせた時の感覚は、人生の中でも滅多に得られないものだ。だが、ごく初期の911が厄介であることは否定できない。1968年モンテカルロラリーで優勝したかつてのワークスドライバー、ヴィック・エルフォードは、雪の上でも氷の上でも100%で走らせることができた。彼は優れたバランス感覚と、凍った峠道の下りで911をスライドさせる時に必須の電光石火の反射神経を持っていた。簡単に言えばヴィックはある種のスーパーマンだった。
 
ポルシェの理想的な運転方法は356の時代に成立したと言える。リアマウントのエンジンの重さを振り子のように使うのは比較的簡単で、多くの356オーナーはコーナーの入り口でテールを振り出し、カウンターステアを当てながらスライドを維持するためにスロットルを開ける、という風に操縦する。もちろん完全にスロットルを戻してしまえばスピンに至る。下りでのブレーキング時に、ロックさせずにフロントのグリップを探るのも十分な注意を要する。
 
小さな356をこのようにスライドさせるのはまったく問題ないが、重い6気筒エンジンを積んだ大きな911となると話は違う。それでも初期の911を飛ばす場合の基本は同じ、その後ホイールベースがわずかとはいえ延長された時は、大勢の911オーナーが嘆いたものだ。1970年代初めのスタンダード911は完全に自信を持って飛ばせる車ではなかった。ステアリングは素晴らしく鋭敏で正確だったが、気軽にコーナーで横に向けられるような車ではなかった。それに打ってつけなのが1973年の2.7RSである。この最も偉大なドライバーズカーは、わずかにスライドさせる伝統的なポルシェスタイルで限界まで飛ばしても、その挙動を十分に予測できた。
 
その後、衝撃吸収バンパーと各種安全装備によって大きく重くなったにもかかわらず、最新技術を取り入れた911の完成度は維持された。1970~80年代を通じて、予測しやすく岩のように頑強という911特有のフィールはすべての自然吸気モデルに共通する。それに対して初期のターボはずっと危うい車だった。サーキットではそのパワーを爆発させることができても、一般道では慎重さを要した。それを軽視すれば、いつか必ずスピンに陥る。
 
1989年のカレラ4は確かにパワーオンでアンダーステアが強く、それは操縦の工夫で何とかなるものではない。扱いやすさは驚くほどだが、その先を求めるならばより後期モデルを選んだほうがいい。1994年にビスカスカプリングを採用したカレラ4はずっとバランスが取れた車だからだ。見た目と性能は申し分のない初期型964カレラ2は、残念ながら世評通りやや鈍い。これを"治療" するにはリアサスペンションのトレーリングアームを硬いものに交換するぐらいしか手はない。
 
タイプ993で911は再び純粋なドライビングの楽しさを取り戻した。この911は前述した伝統的なポルシェマナーで、しかも40年前のモデルよりずっと控えめなアングルで応えてくれる。より速く安全で、ずっと運転しやすく、そして多分それは悪いことではない。私たちは誰もヴィック・エルフォードの真似はできないのだ。

編集翻訳:高平高輝 Transcreation: Koki TAKAHIRA Words: Robert Coucher

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