100年に1度の対決│2台のアストンマーティンを比較

Photography: Matthew Howell


 
トマリンとDB11も、それほど遅れずにやってきた。ガソリンスタンドで平凡な車と並ぶと、シンプルで控えめなシルバーがいっそう美しく見える。とはいえ、スタイリングの裏に隠された理論は決して控えめなものではない。見慣れていた近年のアストンとの違いは明らかで、当初は違和感を覚えたところもあったが、今ではそうした部分ほど好きになった。見るからにエレガントでダイナミックな車だ。
 
2台連なってピカリングからムーアへと上っていき、絶景が広がるA169を海辺の街、ウィットビーを目指して走る。私はそのままヴァンキッシュSで走ることにした。これまで徐々に積み上げてきた印象を完成させてからDB11にスイッチしたいと考えたからだ。それに、ここからはとびきりの道が続くことを私は知っていた。その先には、フォトグラファーのマット・ハウエルが気にいっているポイントがある。近くに空軍のファイリングデールズ基地があり、巨大な三角形のレーダー施設が目印だ。
 
エンジンの回転を上げる。"S"はこれまでのヴァンキッシュとはやや異なり、より高回転域で本領を発揮する。そんなことをしなくても速度は出る。だが、どうせなら単純にトルクに頼るより低めのギアで引っ張って、鋭い吹け上がりと荘厳なサウンドを楽しみたい。レスポンスが鋭くなったギアシフトと磨き抜かれたシャシー性能のおかげで、車全体の反応もさらによくなっている。

それでいて不必要な粗さは加わっていない。よりアグレッシブな走行モードに変えても、そこは変わらなかった。荒野を軽やかに舞いながら、ぐいぐいと加速しては風景を置き去りにしていく。
 
これほど強大な力で駆動しようとするなら、冷えた路面にリアタイヤを取られても不思議ではない。だが、電子制御のダイナミックスタビリティコントロールが抜かりなく繊細に効いているので、道路から放り出される心配をせずにリアタイヤに頼ることができる。

スタビリティコントロールのレベルを少し下げるか、完全にオフにすることも可能だ。もちろん慎重さは必要になるが、それに見合う大きな楽しさがある。大人のためのドライバーズカーなのだから、こうでなければ。
 
ブレーキはカーボンセラミックの巨大なディスクをこれまた巨大なキャリパーで挟み込んで、とてつもない制動力を発揮する。ペダルを踏んだときのフィールと安定感も抜群だ。
 
ときおり緩やかな弧を描きながら一直線に続くこの道で、“S”はどこまで速度を上げられるのだろうか。想像するとゾッとするが、幸いなことに常軌を逸したスピードでなくても楽しめる要素がたっぷりある車だから、答えを探る気にはならない。数字で勝つよりはるかに重要なことがある。もちろん、ヴァンキッシュSならスピード競争でも好成績を残せるはずだが。

編集翻訳:嶋田智之 Transcreation: Tomoyuki SHIMADA  原文翻訳:木下 恵 Translation: Megumi KINOSHITA Words: Richard Meaden 

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